野ばら -Heideröslein- Op.3-3 D.257【シューベルト】~音楽作品 名曲と代表曲
『魔王』と並ぶシューベルト初期の傑作歌曲
ゲーテの詩の一つで1799年に出版された『野ばら』に、曲をつけて歌曲に仕立てたシューベルトの歌曲。
『野ばら』の詩は、ゲーテが1771年にシュトラースブルク(ストラスブール)に滞在していた時に書かれたもので、フリーデリーケという女性に恋をしその女性に贈られたものです。
ゲーテの『野ばら』の詩は傑作と評価されており、シューベルト、ハインリッヒ・ヴェルナー、ベートーヴェン、シューマン、ブラームスを始め、多くの作曲家がこの詩に曲を付けています。
その数は150を越えると言われ、中でもシューベルトとウェルナーのものが特に知られ、日本では近藤朔風の訳詩によって長く親しまれてきました。
歌曲王シューベルトのリートの中でも最も知られる代表的な作品で、リート形式の見本というべき曲想に、ゲーテによる原詩のもつ繊細な世界が昇華されています。
- シューベルト版・近藤朔風 訳
童は見たり 野なかのばら 清らに咲ける その色愛でつ
飽かず眺む 紅におう 野なかのばら
手折りて往かん 野なかのばら 手折らば手折れ 思い出ぐさに
君を刺さん 紅におう 野なかのばら
童は折りぬ 野なかのばら 折られて哀れ 清らの色香
永久にあせぬ 紅におう 野なかのばら
- ウェルナー版・近藤朔風 訳
童は見たり 荒野のばら 朝とく清く 嬉しや見んと
走り寄りぬ ばら ばら赤き 荒野のばら
われは手折らん 荒野のばら われはえ耐えじ 永久に忍べと
君を刺さん ばら ばら赤き 荒野のばら
童は折りぬ 荒野のばら 野ばらは刺せど 嘆きと仇に
手折られにけり ばら ばら赤き 荒野のばら