交響曲第6番 ロ短調 作品74 「悲愴」 第1楽章【チャイコフスキー】~音楽作品 名曲と代表曲
最高傑作チャイコフスキーの心からの真実
交響曲第6番Op.74は6番目の最後の交響曲で、『悲愴』(ひそう)という副題で知られ、チャイコフスキー最期にして最高の傑作とされる作品です。
その独創的な終楽章をはじめ、チャイコフスキーが切り開いた独自の境地が示され、チャイコフスキーの交響曲作品を代表するばかりではなく、19世紀後半の代表的交響曲の一つとして、また広く古今の交響曲作品の中でも最も人気のある作品の一つとして高く評価されています。
副題のタイトルが付けられたのは初演後のことで、モデストの伝記によれば、初演後チャイコフスキーは単に「第6交響曲」として世に送り出すことに不満を感じていて、弟に何か適当な標題はないかと相談を持ち掛けたとあります。
弟モデストが提案した「悲愴」にチャイコフスキーは同意したとされていますが、これはモデストの伝記によるもので定かではありません。
楽譜の出版をしていたピョートル・ユルゲンソンが、チャイコフスキーに送った手紙に「《第6悲愴交響曲》よりも《交響曲第6番 悲愴》とするべきだと思います」と書かれていることから、実際には楽曲が完成していた頃には、すでにチャイコフスキー自身がこの題名を命名していたことが分かっています。
また初演のプログラムに副題タイトルの「悲愴」は掲載されていませんが、チャイコフスキーがユルゲンソンに初演の2日後に送った手紙で「Simphonie Pathétique」という副題をつけて出版することを指示しています。
「悲愴」という名前が付けられていることからも判断されるように、「第4番」及び「第5番」の精神世界を継承しつつ、それをさらに突き詰めた形での標題的交響曲としてまとめられています。
交響曲中最長の演奏時間である第1楽章ですが、チャイコフスキーは情熱の強さから僅か4日間で書き上げたといいます。他の3つの楽章には半年ほどを費やしていますので、その集中度には凄まじいものがあります。
第1楽章のロ短調の序奏は、「第5番」のものと比べても遥かに暗く陰鬱ですが、他の楽章にはないインスピレーションが満ちています。