4つの小品 第1曲 間奏曲 ロ短調 Op.119-1
ブラームス最晩年にして最後のピアノ作品
『4つの小品』Op.119は、1893年に作曲されたピアノ独奏のための性格的小品集で、ブラームスが作曲した最後のピアノ独奏作品です。
同年に作品番号なしの『ピアノのための51の練習曲』も出版されていますが、Op.118と共にブラームスの生前に出版された最後の曲集となりました。
ブラームスが夏の間に過ごしたオーストリア湖水地方バート・イシュルで作曲され、第1曲が1893年5月、残りの3曲が6月に着手されています。
初演は1894年3月7日ロンドンにて、イローナ・アイベンシュッツのピアノによって行われ、同時にOp.118も初演されています。
ブラームス最晩年のピアノ曲、『7つの幻想曲集』op.116、『3つの間奏曲』Op.117、『6つの小品』Op.118、『4つの小品』Op.119は、1892年から1893年にかけて4つの曲集として出版されました。
これら4つの曲集に収められた楽曲は、それぞれ奇想曲(カプリッチョ)、間奏曲(インテルメッツォ)、バラード、ロマンス、 狂詩曲(ラプソディ)と名付けられています。
Op.119は、「第1曲 間奏曲 ロ短調」「第2曲 間奏曲 ホ短調」「第3曲 間奏曲 ハ長調」「第4曲 ラプソディ 変ホ長調」の4曲から構成されています。
「間奏曲」という漠然とした題名ではありますが、曲自体は詩的な雰囲気を帯びていて、ブラームスは穏やかな曲想の作品に包括的に「間奏曲」の題名を付けました。
1893年5月付けのクララ・シューマン宛ての書簡の中で、ブラームスは次のように綴っています。
あなたがきっと喜んでくださると思い、あなたのためにピアノの小品を書こうとしていました。不協和音で渦巻いている曲です…この小品はとても憂鬱で「極めてゆっくり演奏すること」というのは、決して控えめな表現ではありません。
全ての小節、全ての音符がリタルダンドのように聞こえ、全ての音から憂鬱が吸い込まれるかのように、そして不協和音から官能的な悦びが起こるかのように聞こえなければなりません。
これを受けたクララはこのインテルメッツォを“悲しくやさしい”と表現していいて、自らの心情を達観するような穏やかさがあり、切ない情念の表現は即興的な緩やかさではなく、綿密に計算された音配置によって実現されています。