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主題と変奏 ニ短調 Op.18b (弦楽六重奏曲第1番第2楽章 ピアノ独奏版)

 

 

 

クララに対する熱く深い想いが込められたピアノ曲

 

「主題と変奏 ニ短調」Op.18bは、ブラームスの作品《弦楽六重奏曲第1番》(全4楽章)のうち、1860年に自ら第2楽章をピアノ独奏用に編曲したもので、ブラームスが27歳の時の作品です。

 

1860年9月13日、クララ・シューマンの41歳の誕生日記念として贈与され、初演は1865年10月31日にフランクフルトで行われました。

 

ベートーヴェン的な力強い主題で始まるこの作品は、主題と6つの変奏から成っていて、ビオラとチェロが追加された重厚な弦楽六重奏の響きが、ピアノの低音を強調した編曲に活かされています。

 

ブラームスが20歳の時に出会ったシューマンの妻であるクララ・シューマンは、自身も有能なピアニスト・作曲家であり、ブラームスの14歳年上にあたります。

 

1853年、ブラームス(20歳)はドイツ・デュッセルドルフのシューマンを訪ね、自作を演奏し夫妻を感嘆させたことから、シューマンとは師弟関係となりました。

 

ブラームスの才能を見抜いたシューマンは、無名だったブラームスを音楽雑誌で絶賛し、将来有望な若き音楽家としてブラームスを世に送り出しました。

 

ブラームスのクララに対しての心情は、まだその時は恋心などはなく、尊敬する師匠の妻であるという程度で特別な感情はありませんでした。

 

しかし、後にシューマンが精神を患い、ライン川に身を投じて自殺を図った頃から、クララとその子供たちを守らなければという想いが芽生え、ブラームスの心情に変化が起こり始めます。

 

シューマンは自殺を図った2年後に亡くなり、ブラームスはいっそうクララに対して心情が深まり、クララ宛てに書いた手紙に、ブラームスはその心情の内を高らかに綴っています。

『どれほどあなたにお会いしたく思っていることか!どんな物音を聞いても窓辺に駆け寄ります。あなたのことばかり思い続けているのです。

 

あなたを想いあなたのお手紙を読み返し、あなたのお写真を眺めること以外何も手につきません。

 

あなたなしにはもうこれ以上耐えられません。気も狂わんばかりに待ち焦がれている者の悲しみを和らげてください。』

そんな思いの丈をぶつけた作品が、この「主題と変奏 ニ短調 Op.18b」で、自作の弦楽六重奏曲第1番の第2楽章をピアノ独奏用に編曲し、クララの41歳の誕生日にプレゼントしました。

 

ブラームスが自らの想いを作品を通してクララに伝えたのは、クララと出会ってから7年後(1860年)のことでした。

 

最終的には内向的なブラームスの性格と、クララが亡くなったシューマンを思い続けたことがあり、2人の関係が進展することはありませんでした。

 

1896年5月20日にクララがこの世を去るまで、ブラームスはクララのことを想い続け、クララの死後ブラームスはこのように語っています。

『ああ、何ということだ。この世ではすべてが虚しい。私が本当に愛したただ一人の人間。その人を今日、私は墓に葬ってしまったのだ…。』

ブラームスは後を追うように翌1897年4月3日の朝、生涯独身(64歳)でこの世を去りました。

 

 

 
  




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