音楽はストレスにどのような効果をもたらすのか
音楽はストレスに伴う過剰な反応を抑制して、ストレスを軽減する機能があります。
ストレスに与える音楽のチカラ
ストレス時には自律神経反応が起こり、血圧、瞳孔、心拍、呼吸が変化してストレス関連ホルモンが放出されます。
この種の情動反応は大脳辺縁系、中でも扁桃体中心核の活動で起こり、また視床下部側方も血圧変化やストレス・ホルモンの放出に関わります。
これらの組織が音楽処理にも関わりますが、音楽が介在することによってこれらの器官で起こるストレス反応が弱められると考えられます。
音楽によるストレス軽減を確かめた研究では、音楽聴取ではコルチゾルが低下するのに対し、ストレスのかかる映像を見た場合では著しく増加したという結果があります。
そしてストレス映像に音楽を加えた場合では、コルチゾルの増加が緩和されました。これは短期的ストレスの軽減に音楽が有効であることを示したものです。
音楽が医療的効果を示すもう一つの例は、痛みに対してです。音楽は手術や麻酔、疼痛治療、出産の際に用いられてきました。
特に痛みの緩和では歯科治療での応用例が多く、他にもガンの末期、慢性背痛、脊椎損傷、火傷、精神障害、出産、ストレス関連性の疾患に関わる偏頭痛、高血圧、潰瘍性疾患でも音楽が用いられて効果を上げています。
これまでの検証では音楽の苦痛緩和あるいは麻酔効果は著しく、ある研究によれば痛みを感じるのと感じない境目(閾値)が50 %上がり、麻酔薬の使用を半分に減らすことができたといいます。
痛みの緩和での音楽は、エンドルフィンを主体とした内因性モルヒネを分泌または増加させることによって、中脳水道周囲灰白質のオピオイド受容体を活性化させ、鎮痛効果をもたらすものと考えられます。
また、音楽はパーキンソン病や脳卒中の運動訓練や歩行訓練にも利用され、ある程度の効果を上げています。
パーキンソン病は小刻み歩行、すくみ足などの運動障害に起こり、痴呆を伴うこともあります。原因は中脳の黒質のドーパミン作動性神経細胞の死滅と、青斑核のノルアドレナリン作動性神経細胞の障害です。
音楽経路はこうした組織と重複しており、音楽によって神経組織が再生、再構成されるなどの変化が起こっているものだと思われます。