左手の基本的なフォーム

ベースで音を出すためには、右手によるピッキングと左手による押弦のどちらが欠けても成り立つことはありません。どちらも非常に重要なアクションになりますが、左手の押弦に対してのフィンガリングを軽視しないことが大切です。
フォームが崩れている場合では、「綺麗な音色が出ない」「滑らかなフレージングが行えない」「弾けるはずのフレーズが弾けない」「すぐに疲れて長時間プレイができない」などの、諸症状を引き起こす要因になってしまいます。
左手のフォームを問題視せず見過ごしてしまうと、後で取り返しのつかない悪い癖が付いてしまうといった事にもなり兼ねないので、初期の段階で自分のフォームをチェックしておきましょう。

4フレット・フォーム

左手の押弦フォームの基本は「4フレット・フォーム」です。この押さえ方は、左手の人差し指から小指までの4本の指に対して、それぞれ1フレットずつ対応させるもので「1フレット1フィンガーの法則」に準じたフォームです。

4フレット・フォーム

例えば人差し指で2フレット、中指が3フレット、薬指は4フレット、小指が5フレットといったように、1フレットに1フィンガーを押さえるのが基本のフォームです。

ネック裏の親指の位置を動かさずに、一ヵ所のポジションで対応する基本形の押さえ方で、このように「親指の位置を動かさずに対応できる範囲」のことを「1ポジションで対応できる範囲」と表現します。

また、この基本形のフォームに限らず、押さえるポジションはフレットのすぐ脇を押弦することも、基本となりますので覚えておきましょう。

フレットの際を押さえることで、ビビリ音などを無くし、小さい押弦力で綺麗な音を出すための必須の要素となりますので、初期段階から無意識にポジションを取れるように習慣付けておきましょう。

ポジションによっては、基本の1ポジション4フレット対応から、さらに人差し指と小指でそれぞれ隣のフレットをカバーする6フレット対応も必要になります。

実際には4本の指で6フレットに渡って対応することになり、このような指を広げる動作を「フィンガー・ストレッチ」といいます。

このフィンガー・ストレッチは、手の大きさやフレットの幅、押弦するポジションなどによって異なってきますが、できる限り意識して指を広げるフォームを保つ習慣をつけましょう。

これにより、ポジション移動が少なくなるにつれ、移動間に要するタイム・ラグを減らすことができ、落ち着いた効率の良い運指を行うことが可能になります。

これから先レベルアップするにつれ、速いテンポのフレーズや煩雑なパッセージなどを弾きこなす機会が増えてきますので、その際に基本フォームの重要性が問われることになるので、初期段階で基礎フォームを身に沁み込ませておきましょう。

音階に隠された基本的要素

音階の「ドレミファソラシド」を3弦3フレットから弾いた際に、まずは下図のようなフィンガリングができているかどうかを確認してみましょう。

ネック裏の親指は動かさずに1ポジションのフォームで、3弦3フレットの中指から順に、3弦5フレットの小指→2弦2フレットの人差し指→2弦3フレットの中指→2弦5フレットの小指→1弦2フレットの人差し指→1弦4フレットの薬指→1弦5フレットの小指といった音階の指使いになります。

ロー・ポジションでフレット幅が広いため、手の小さい方には少し難しいかも知れませんが、弾けるようにするための努力は怠らないようにしましょう。また、フレットの際を押さえることも忘れずに確認しておきましょう。

この「ドレミファソラシド」の音階のフィンガリングには、基礎になる基本的要素が凝縮されています。「4フレット・フォーム」で4本の指を全て用いることで、効率の良いフィンガリングの基本が身に付き、またロー・ポジションでの動作で指を広げるストレッチにもなるという要素が含まれています。

このようなメリットが隠されていますので、練習や本番前のウォーミング・アップとして、この音階を弾くだけで十分に効果のあるストレッチになります。

3フレット・フォーム

手の小さい人でロー・ポジションでの4フレット・フォームがどうしても不可能な方は、「3フレット・フォーム」で弾いてみましょう。

ただし、手が小さい人には物理的に不可能な「フィンガー・ストレッチ」を除いて、正しいフィンガリングでの「ドラミファソラシド」の音階や、4フレット・フォームを基本に弾く習慣の努力は怠らないようにしましょう。

「3フレット・フォーム」で弾く際は、あくまでも最終手段だと言う事を認識した上で利用するようにしましょう。図の例では、人差し指が3弦の3フレットを押さえている時、薬指に中指を添えた2本1組で3弦の4フレットを押さえ、小指で3弦の5フレットを押さえるといったように、4本の指を3フレットに対応させたフォームになります。

3フレット・フォームの例

このフォームであれば、手の小さい人でも対応可能になりますが、気を付けなければいけないのは、小指以外の3本の指で3フレットに対応させてしまうことです。

小指を使わなくなると悪いフォームが付いてしまいますので、4本の指を分け隔てなく使いこなすことが前提であると言う事を忘れないようにしましょう。

3フレット・フォームで「ドレミファソラシド」の音階を弾いた場合は、下図のようなフィンガリングになります。3フレットから5フレットを基本のポジションとして構え、2フレットの音はストレッチ・フィンガーの人差し指で対応するという形です。

フィンガリング・ポジションの選択

左手の基本的なフォームが身に付いた後に重要なことが「ポジショニング」で、どのポジションでそのフレーズを弾くのかを選択することです。

例えばド(C)の音を弾く場合、選択肢は3弦の3フレットと4弦の8フレットの二か所のポジションが考えられます。この場合は3弦の3フレットを選択するのが基本となりますが、それは3弦の3フレットがその次に進む音の選択の幅が広いポジションだからです。

このド(C)の音からつながる音が上方向(高い音の方向)の場合は、どちらのポジションでも大差はありませんが、下方向(低い音の方向)の場合は、3フレット3弦のポジションの方が明らかに効率が良くなります。

この例では単音を始点にポジショニングを考えましたが、実際には複数の音が連なったフレーズとして考えなければならないので、ポジショニングが素早く取れるような適切な判断力が求められます。

また、スライドやグリッサンド(グリス)といったニュアンスなども加味された上でのポジショニングも要求されるので、効率が良く省エネ的なフィンガリングが行えるように技量を磨いていく必要があります。


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