音楽の起源~旧石器時代
音楽の起源
現生人類の直接の祖先となる種は確定されていませんが、エチオピアの約440万年前の地層から発掘されたアルディピテクス・ラミダス(ラミダス猿人)は、直立二足歩行をするのと同時に木の上で生活をしていたと考えられています。
進化論の生物学者ダーウィンは、音楽を「異性を求め、誘う行為」と結びつけて考えました。
ドイツの経済学者カール・ビュッヒャーは、労働とリズムの著書で「音楽は協働作業を容易にするための手段」と説きました。
フランス革命に影響を与えたジャン=ジャック・ルソーや、イギリスの哲学者で社会学の創始者であるハーバート・スペンサーなど、様々な哲学者やリヒャルト・ヴァーグナーなどの音楽家にも支持されたのが「音楽は話し言葉から生まれた」という説で、強調された言葉が音楽になっていったと考えられました。
そして、民族音楽学と近代楽器学の創始者で音楽学者のクルト・ザックスは、「音楽は歌うことから始まった」という説を唱えました。
旧石器時代
260万年前に始まった旧石器時代。初めは石を打ちつけて割った単純な小石でしかなかった石器は、後期とされる4万年前~1万年前の頃に火打ち石やナイフ、毛皮などを剥ぐ道具など様々な用途をもつものに発展していきました。
ドイツのウルム近郊の洞窟で約3万6000年前の骨の笛が発見されています。他では人類最古の絵画と言われる洞窟壁画で、スペインのカンタブリア州の洞窟で発見され世界遺産にも登録されている「アルタミラ洞窟壁画」は、旧石器時代末期の約1万8500年前から1万4000年前に描かれたものとされています。
そこには大型の野生動物以外に人の手形も数多く描かれ、壁画を描いた人物の署名という説や、クロマニヨン人のシャーマンが壁画を描いていたとの説もあります。
シャーマンとは霊や精霊、死者などの超自然的な存在と直接、交流や交信することができる力を持つ者で呪術師や巫女、祈祷師として種族の中に存在し祭祀を司ると共に人々の体を治療することもあり、先史時代や古代社会においては政治を左右するほどの大きな影響力を持っていたとされています。
音楽が歌や強調された言葉から始まったと考えれば、通常とは異なった意識状態になり、超自然的存在と交流するシャーマンの行動自身が音楽の起源に近いとも考えられます。
旧石器時代は1万年前頃に終わりを告げ、新石器、青銅器、鉄器と時代は発展していきます。
<ウルムで発見された骨の笛>
<アルタミラ洞窟壁画>