ピュタゴラス
すべての物事を「数」の原理で考えようとした紀元前6世紀のピュタゴラスは、古代ギリシアにおいて音楽理論の始祖としても位置づけられています。
ある日、ピュタゴラスは調和した響きを生むハンマーの組み合わせに気づき、ハンマーの重さのみが音の調和に関わっていることを知り正確な重さを量りました。
同じ素材で同じより糸から作った4つの弦と重りを使った実験を通して、その重さの違いの比率から協和する音程の振動数の整数比を算定しました。
オクターヴ、5度、4度の3つの協和音を作り出す弦の長さの比が、それぞれ2対1、3対2、4対3の単純な数の比になっていることを見出しました。
この数値の発見は「ピュタゴラス音律」と呼ばれ、ギリシア音楽理論の展開の基となり、そうした音楽理論的考察は、その後ヒッパソス(紀元前5世紀前半)、フィロラオス(紀元前5世紀後半)、アルキュタス(紀元前4世紀前半)らに継承されます。
こうした数が単に計算に使う数ではなく、あらゆる事物の内奥に存在し、実在する個々のものを成り立たせている諸原理だとする見方も示しており、やがてこれを宇宙全体の構造原理にまで拡張していきます。
数比に基づいて生み出される音程関係だけが音楽なのではなく、協和音の数比を自然や宇宙の形成原理にも重ねる見方で、一般に天体のハルモニアといわれるもので宇宙の秩序や調和を一種の音楽とみなし、天体の音楽という観点での考察はプラトンの「ティマイオス」に継承されていきます。
また、人間の魂の調和も一種の音楽的状態とみなされていましたが、それは宇宙の似像である音楽のもつ数的関係を通して、天体のハルモニアを魂の中に同化することで魂を浄化できると考えたからです。
この問題はやがて形を変えて、「エートス論」へとつながっていきます。
<ピュタゴラス>