ギリシアの音組織と楽譜
ギリシアの音組織は一般に下行形(ド→レ→ミではなくド→シ→ラ)で示され、その基礎となるのはテトラコルドと呼ばれる音列とされています。
テトラコルドは完全4度の枠を持ち、両端が固定し中間音が変化する4つの音からできていますが、中間音の位置によって全音階的、半音階的、四分音階的の3つの種類に分けられます。
このテトラコルドを積み重ねて音列を拡大していきますが、それには2つの方法があり、一つ目は上のテトラコルドの下端の音を、下のテトラコルドの上端の音として重ね合わせたもので接合型と呼ばれます。
二つ目は上のテトラコルドと下のテトラコルドの間に、全音の隔たりを置いて並べるもので、こちらは分離型と呼ばれています。
この2つの方法を組み合わせると完全音組織ができますが、ギリシアの音階は完全音組織から各1オクターヴを切り取った形で説明され、各民族の名を取って7つに区別されます。
そうしたオクターヴの音階は、オクターヴ種やハルモニアと呼ばれていました。ギリシアの楽譜については、現存するものは数十曲程度でそのほとんどが断片です。
種類としては、後世の書物のなかで記載されたもの、石に刻まれたもの、パピルスに書かれたものに分けられますが、いずれも抒情詩や悲劇が盛んであった紀元前6世紀や紀元前5世紀にまで遡るものは見つかっていません。
デルフォイの「アポロン賛歌」(前2世紀・石刻)、セイキロスの「スコリオン」(前2世紀~前1世紀・石刻)、後世の書で紀元2世紀メソメデスの「ムーサ賛歌」「ヘリオス賛歌」「ネメシス賛歌」などです。
その記譜法にはフェニキア文字といわれる古いアルファベットを用いた器楽記譜法と、古典的なギリシア語のアルファベットを用いた声楽記譜法の2種類があったとされています。
こうしたギリシアの楽譜及び記譜法が、後世に対し大きな重要性を持つことはありませんでしたが、音楽思想や音楽理論に関しては、種々の誤解を含みながらも中世のキリスト教音楽に取り入れられ、劇音楽を含めその後の西洋音楽の発展に大きく貢献しました。
<セイキロスの『スコリオン』の一節>
<リラやアウロスの奏者>