古代から中世
「中世」とは「中間の世紀」のことであり、古代ギリシア・ローマ世界と古典古代の文化の再興を意味する「ルネサンス」の間とした時代区分です。
5世紀から14世紀まで約1000年にも及ぶこの時期に、ヨーロッパ世界の様々な面で土台が築かれ、音楽も例外ではありません。その後の西洋音楽の多様な展開を考えるとき、直接のルーツとなる中世の音楽のあり方は非常に重要な意味を持ちます。
古代ギリシア・ローマ時代と中世との間には大きな区切り分けはされていますが、古代の文化が完全に途絶えたわけではありません。中世の音楽観には古代からの影響が表れており、音楽を数学的な学問との捉え方が古代からの継承でもあり、その後の展開に関与しています。
スコラ・カントルムとベネディクト会
キリスト教が国教となったその後は、信者の数が急激に増え、信徒たちが集まり神に祈るための大きな聖堂が建てられ始めました。5世紀半ば頃からローマにスコラ・カントルムという歌の学校が創立され始め、教会の歌い手にするための音楽教育も行われていました。
5世紀から7世紀にかけての時期、教皇たちは典礼やその中で行われる聖歌のスタイルの統一や改定に大きな力を注いでいました。その教皇たちのバックボーンとして活躍していたのが、529年にイタリアのモンテ・カッシーノにベネディクトゥスによって創設されたベネディクト会です。
カトリック教会の最古の修道会で、ベネディクトゥスが定めた修道院での生活の決まりは「聖ベネディクトゥスの戒律」と呼ばれ、その後のヨーロッパの修道院に大きな影響を与えています。
「聖ベネディクトゥスの戒律」には、夜間の時課(典礼)で唱える詩篇の数や内容についても詳しく記されており、教会や修道院において神に捧げる歌はとても大切な役割を担っていたのです。
<ベネディクトゥス>