西ヨーロッパ変化の11世紀~12世紀

大学という組織ができ上がる前の11世紀から12世紀にかけて、各地の教会学校から学校へと渡り歩く遊学生(書生)のような若い聖職者の集団がいました。

彼らの師匠とされたのは謎の司教と呼ばれていたゴリアス。「ゴリアス」という名は旧約聖書において、ダビデ王と戦った巨人ゴリアテの中世のラテン語形からきています。

その師匠の名に由来して彼らは「ゴリアール」と呼ばれていました。ゴリアールは「大食い」を意味するラテン語の「グラ」に由来するという説もあるように、彼らは大酒飲みで風刺の名人でもありました。

社会や教会が十字軍の遠征で盛り上がる中、その裏にある教会の腐敗や政治体制に対して痛烈な批判を浴びせるゴリアール。聖歌や賛美歌の歌詞をもとにして、酒や女、パロディを描いた詩や歌作りを行っていました。

彼らの若い自由な詩作は、当時のラテン語の言葉が持つ自然なアクセントを活かした新しい表現を作り出していたようです。19世紀に入り、ドイツ南部のバイエルン州の修道院で発見された詩歌集「カルミナ・ブラーナ」には、彼らの歌が載っていました。

同じ頃、騎士文化の隆盛と共に世俗的な詩や歌も数多く生まれてきます。10世紀頃からフランスでは、「ジョングルール」と呼ばれる職業的な音楽家・芸能集団が活躍するようになっていきます。

今日でもジョングルールという言葉は、フランス語で大道芸人を意味していますが、彼らは村から村へと遍歴し、歌を歌ったり楽器を演奏したり、手品や曲芸を披露していました。

その遍歴の途上において「シャンソン・ド・ジェスト」と呼ばれる英雄を讃える武勲詩(叙事詩)などを各地に伝承し、11世紀にフランスに生まれた「ローランの歌」や、有名なアーサー王物語とも関係の深い「聖杯伝説」などの中世の文学の誕生に果たした彼らの影響は大きいと言われています。

そのジョングルールたちを雇い入れていたのが、「トルバドゥール」と呼ばれた詩人兼作曲家たちでした。トルバドゥールの元となった「trouver(トゥルベール)」という言葉には、「見出す」あるいは「発明する」、「思いつく」という意味があります。

11世紀後半からフランスの南部を中心に活躍をし始め、プロヴァンス語の古語であるオック語という言語を使って叙事詩を作り、それに旋律を付けていました。

詩作や音楽を愛好する貴族の一人から始まったと考えられる彼らは、当初は歌や演奏はジョングルールにまかせていた詩人兼作曲家だったようです。

現在のスペインと接するフランス南西部にあったアキテーヌ公園の都ポワティエを中心に活躍したトルバドゥールは、やがて南フランスの各地の宮廷で人気を博し、イタリアやスペイン北部、アルプス山麓の地域まで広がっていきます。

彼らがテーマにしたのは騎士道と宮廷風恋愛。特に他の男性の妻となってしまった理想の女性に対しての叶わぬ恋は、とても大切なテーマでした。

中世の封建的社会の中では、主従関係は崩してはいけないものであり、それはまた潔い騎士道精神や禁欲主義と結びつくものでもあったのです。

12世紀後半に一世を風靡したトルバドゥールですが、1209年に起こったアルビジョワ十字軍の弾圧によりやがて衰退し始めます。

その芸術はフランス北部の「トルヴェール」たちに、ドイツやオーストリア地域では「ミンネゼンガー」と呼ばれる人たちに受け継がれていきます。

「ミンネゼンガー」の「ミンネ(ミネ)」は、当時の中世高地ドイツ語で「愛」を意味する言葉で、「ゼンガー」は「歌人」を意味していました。

中世の高地ドイツ語を使って「ミンネザング」と呼ばれた宮廷恋愛詩を作り、その詩にメロディを付け朗誦(ろうしょう)したのがミンネゼンガーでした。

自分よりも位の高い高貴な貴婦人に対しての崇高な愛は、自分の心や徳を高めるものであり、騎士としての資質を培うものとして考えられていました。

やがて十字軍の終りと共に騎士階級はその勢力を失い始めます。騎士階級の没落に伴って力を持ち始めたのが、商人や職人たちの団体です。

2世紀にわたる十字軍の遠征は、荘園を有する領主や貴族、騎士の力を弱めていきましたが、同時に内陸の道路を拓き交易と商業の発展をもたらしました。

イタリアのヴェネツィアやジェノヴァなど港を持つ都市をはじめ、12世紀までにはヨーロッパの各地で自治都市が誕生しました。ワインや毛織物など様々な商品が行き交い、交易の拠点となった自治都市は城壁で囲まれ、農村地域とは区別されていました。

やがて、各都市は封建的な領主たちに対抗するために同盟を結ぶようになります。北ドイツの都市リューベックやハンブルクを中心とする「ハンザ同盟」ができたのは13世紀中頃のことです。

最盛期の14世紀には100以上の都市が加盟し、強力な軍事力も有していました。そして社会の担い手の変化は、芸術や文化の担い手にも変化をもたらしました。
トルバドゥールやトルヴェールは13世紀末には衰退し、ミンネゼンガーも14世紀に入ると衰退し始めます。彼らに代わって世俗音楽の舞台に上ってきたのが、「マイスタージンガー」と呼ばれる人たちでした。

「マイスター」とは「職人たちの親方」を意味し、また「名手・名人」という意味もあります。ドイツの各都市では、靴や仕立てなどの手工業に従事する人たちの職業別組合であるギルドによって、歌の組合や学校が設立されていきました。

19世紀のドイツの作曲家リヒャルト・ヴァーグナーの≪ニュルンベルクのマイスタージンガー≫では、16世紀に活躍した実在のマイスタージンガーであるハンス・ザックスが主人公として出てきます。

ザックスは靴職人の従弟の傍ら、マイスターゲザングと呼ばれる歌唱芸術を学んだ人物で、4000に及ぶ歌曲と1700もの物語と小劇を作ったと言われています。

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