交響曲第3番 変ホ長調 Op.55 「英雄」 第1楽章【ベートーヴェン】~音楽作品 名曲と代表曲
交響曲の歴史に革命を起こした不滅の金字塔
交響曲第3番「英雄」Op.55は、1803年から1804にかけて作曲された3番目の交響曲で、イタリア語の原題に由来する「エロイカ(eroica)」とも呼ばれています。
主に1803年に作曲され翌年の1804年初めに完成し、非公開の初演は1804年12月にロブコヴィッツ候邸で行われ、公開の初演は遅れて1805年4月7日、オーストリア・ウィーンのテアター・アン・デア・ウィーン劇場で行われました。
フランスの英雄ナポレオンを讃える曲として作曲されましたが、完成後まもなくナポレオンが皇帝に即位し、「彼もまた俗物であったか」とベートーヴェンは激怒し、献呈辞が書いてある表紙を破り取ったという逸話(エピソード)が有名です。
しかし、実際にはウィーン楽友協会に現存する本当の楽譜には表紙を破り取った形跡はなく、現実には「ボナパルト」という題名とナポレオンへの献呈辞をペンでかき消した上に、「シンフォニア・エロイカ(英雄的交響曲)」と改題され、「ある英雄の思い出のために」と書き加えられています。
交響曲第3番「英雄」Op.55は、ベートーヴェンの最も重要な作品の一つであると同時に、器楽音楽による表現の可能性を大きく広げた画期的大作に位置します。
第1楽章ではフォルテで和音が2つ鳴らされた後、低弦で変ホ長調主和音を分散和音型にした主題が現れ、この主題はモーツァルト作品との類似を思わせるものです。
ベートーヴェンもまた他人の作品からの借用の名手であったことを考えると、この主題もおそらくは転用の一例であると言え、もっともこの主題は終楽章に用いられている変奏主題と密接な関係にあるものです。
4分の3拍子という舞曲的性格の拍子と共に、この主題が元はダンス音楽として作曲された、終楽章主題とも関係を保っている点は注意されるべき要所です。
第2主題は木管で提示されて弦に受け継がれていきますが、これは挿入的性格の強いものであり、第1楽章全体はソナタ形式をとりながらも、冒頭の第1主題を骨子に変奏曲風に構成されていると言えます。
基本主題(第1主題)をもとに、それを性格的に発展させながら楽章全体をまとめ上げていくところに、ベートーヴェン作品に見られる論理的構築性が根ざされています。
極めて雄渾な展開部を経て、再現部は低弦による第1主題提示で始まりますが、その直前に弦楽器が刻む、属七の和音に乗ってホルンが低く主題を吹奏するところは、卓抜なアイディアを示すものとして有名です。