シューベルト:楽興の時 第3番 ヘ短調 D.780-3, Op.94-3
シンプルでリズムも愛らしい可憐な小品
シューベルトは、どちらかというとその魅力的なリート(歌曲)の数々によって、歌曲作家というイメージが強いですが、交響曲や宗教音楽、室内楽などその創作分野は広く、ピアノ曲の分野でも人々に親しまれ愛されてきました。
中でも「八曲の即興曲D.899, Op.90」「遺作D.935, Op.142」「楽興の時D.780-3, Op.94-3」は、ピアノ曲の分野の代表的な存在といえます。
「楽興の時」は1823年から1828年にかけて作曲された、六つの小品からなるピアノ作品集です。原題の「Moments musicaux」というフランス語は「音楽的な瞬間」といった意味ですが、一般には英語訳をカタカナ表記にした<モーメント・ミュージカル>と呼ばれることが多いです。
「楽興の時」全六曲の中で最もポピュラーな小品がへ短調の第三曲で、第三曲は1823年に刊行された「アルバム・ミュージカル」第一巻に<ロシア風エール>という表題で収録され、シューベルトの存命中から人気が高かったようです。