ショパン:バラード 第3番 変イ長調 Op.47
絶対音楽を貫いたショパンの持ち味が発揮された円熟期の充実した作品
バラード第3番Op.47は、1840年から1841年夏にかけて作曲され1842年に出版されました。ショパンが作曲したバラード(譚詩曲)全4曲中の第3作にあたり、ポリーヌ・ドゥ・ノアイユ嬢に献呈されています。
ショパンのバラードが多様性に富んだ劇的な物語に似た展開を見せることや、その様式が音楽の内容と有機的に結びついて深い内容を伝えていることは、幅広いショパンのピアノ曲の諸ジャンルの中でも特に際立っています。
ショパンのバラードとして残っている4曲から劇的要素が感じ取れることは、ショパンが作曲するにあたって、同じポーランドの詩人ミッケヴィッチの詩から霊感を得たという事実も否定はできません。
しかし、ショパンはいわゆる描写音楽を創作したわけではなく、あくまでも詩の精神を音楽に移し変えたもので、いわゆる標題音楽ではないことは明らかです。
バラード第3番では優雅で洗練された曲想が曲全体を支配しており、前作の第1番・第2番のような激しい曲想は見られませんが、当時のフランス社会の求める雰囲気が凝縮されています。
また、第1番・第2番にも増して作曲技術は高まり、対位法的な手法も取り入れるなど、円熟期の充実した作品になっています。