バレエ音楽 《白鳥の湖》 Op.20 第1幕“ワルツ”【チャイコフスキー】~音楽作品 名曲と代表曲
バレエを超えた壮大なシンフォニー
チャイコフスキーはことのほか善良で温和な人物だったようで、当時のロシア人としては非常に西欧風の優美でスマートな身なりをしており、生前からロシアでは大変な有名人で、人々の尊敬を一身に集めていました。
その一方でチャイコフスキーは、名声に溺れることなく、常に自分自身に対して厳しく、自分をいささかも甘やかすことがないという一面を持っていました。作業をする時間は朝10時から午後1時までと、午後5時から8時までと定め、完全に規則正しく常に同じ時間に仕事をしていました。
チャイコフスキーは、長年文通だけの関係でパトロンであったフォン・メック夫人宛ての手紙に、このように綴っています。
「どんなに偉大な音楽の天才でさえ、時にはインスピレーションが湧かないままに仕事をすることがあることは、まったく疑う余地がありません。
それは招待しても必ずしも直ぐにはやって来ない客のようなものです。しかし、常に仕事はしなければならない。真に誠実な芸術家であれば、気分が乗らないからといって腕をこまねいていることはできません。
気分が乗るのを待つだけで、自分でその気になろうと努めなければ、すぐに怠惰と無気力に陥ってしまうでしょう。耐えて信じることです。自ら気分を高めることが出来た者には必ずインスピレーションが現れます」
節度と勤勉さがチャイコフスキーの作曲への態度を表す一つの特徴であり、数々の名曲はこうした冷静で正確な職人仕事の姿勢から生まれてきました。
第1幕「ワルツ」
第1幕の中間で、王子の成人を祝う村人たちのワルツで、弦楽器によるピッツィカートの序奏に続いて、優雅で生気に満ちたワルツが繰り広げられます。
組曲中でも特に壮大で充実した内容を持つ楽曲で、ワルツ好きのチャイコフスキーらしい、大変魅力的な音楽です。