交響曲 第8番 ト長調 Op.88 第1楽章【ドヴォルザーク】~音楽作品 名曲と代表曲
独特の魅力を備えた交響的世界を展開させる名作
交響曲第8番Op.88はドヴォルザークが48歳の時の作品で、1889年の9月に、美しく豊かな自然に恵まれた南ボヘミアのヴィソカ村の別荘でスケッチを完成させ、11月にプラハで総譜を完成させました。
翌年の1890年2月にプラハ・ルドルフ劇場にてドヴォルザークの指揮で初演されました。かつては『イギリス』というタイトルで呼ばれていました。
この『イギリス』のタイトルは音楽には関係がなく、英国ロンドンのノヴェロ社から交響曲第8番を出版したため『イギリス』と呼ばれるようになりました。
ドヴォルザークは、ブラームスと同じジムロック社から作品を出版していましたが、作曲料を上げようとせず小品ばかりを要求し勝手な作品番号をつけるため、ジムロック社との契約を一方的に破棄しイギリスへ移ったということです。
イギリスは古くから外国の作曲家を温かく迎え入れる国で、ヘンデル、ハイドン、メンデルスゾーンなどがそうで、ドヴォルザークもまたイギリスから手厚い歓迎を受けた作曲家の一人で、1884年(43歳)からの12年間に度々訪れ成功を収めています。
第7番以前の交響曲にはブラームスの影響が強く見られ、また第9番『新世界より』ではアメリカ滞在中に聴いた音楽から大きく影響を受けているため、この交響曲第8番は「チェコの作曲家」ドヴォルザークの最も重要な作品として位置づけられています。
ブラームスにその才能を見出され導かれてきたドヴォルザークにとって、第7番まではドイツの古典的なブラームスの影響が強く出ていますが、第8番ではボヘミアを意識した内容になっていて、ドヴォルザークの持ち味の旋律の良さが存分に活かされています。
ドヴォルザークの9曲の交響曲の中では、次の第9番『新世界より』と並んで広く親しまれている後期の名作であり、第9番があまりにもよく知られ存在も大きいことから知名度では劣りますが、ボヘミア的なのどかで明るい田園的な印象が特徴的な作品です。
古典派以来の交響曲の伝統的枠組みと、ボヘミアの民族的色彩とが融合し、独特の魅力を備えた交響的世界を展開させています。