交響曲第2番 ニ長調 Op.73 第4楽章
美しい風景が広がる長閑な保養地で書かれた開放感溢れる音楽
「交響曲第2番」は、開放感に溢れる明るい雰囲気から俗に“ブラームスの田園交響曲”と呼ばれ、ベートーヴェンの「交響曲第6番」の『田園』と対比されますが、性格的には異にしている作品です。
ベートーヴェンの「田園」が自然との触れ合いに立脚していながらも、なおその背後に理想境としてのアルカディアとの関わりを響かせ、最終的には神的なものとの交感に至っていたのに対して、ブラームスの「第2番」にはそのような意味での牧歌的世界は認められないのです。
ブラームスにとってはあくまでも純音楽的構築性が重要だったのであり、何らかの標題によって具体的な情景描写を展開することは、彼の交響曲世界とは相容れないものでした。
また、交響曲は通常”Symphonie”と書かれますが、ブラームスは友人宛ての手紙の中で、この「第2番」は”Synfonie”であると言っていて、おそらくこのように綴ることによってブラームスは、”Sinfonia(シンフォニア)”のことをも念頭に置いたものと思われます。
元々、この語はギリシア語から転用されたものであり、宇宙的なハーモニー、あるいは一緒に響き合うと言ったことを意味していますので、交響曲という外面的な形に捉われることなく、ブラームスはここで語源に近い意味での響奏を意図していたものと推測できます。
第4楽章は弦のユニゾンで始まる第1主題、それを発展させ形を変えた第2主題、及びその間に彩りを与える新素材によって構成され、最後に第2主題を強調して終曲します。