トランペットのメカニズム

トランペット(ピストンバルブ式)各部の名称

トランペット(ロータリーバルブ式)各部の名称

ヴァルブが装備された後に短くなったトランペット

現代で用いられているトランペットは、ヴァルヴが装備されたものになりますが、以前のトランペットはヴァルヴがなく、現在の楽器の倍近い程の長さがありました。

長さがあることで、高い倍音では出る音が密集するため、何とかヴァルブがなくても音階やメロディを演奏することができました。

19世紀に入りヴァルブが開発され装備されるようになってからも、しばらくの間はトランペットの長さは変わりませんでしたが、倍音が密集していると音を間違えやすいという理由から改良され、現代の姿に至っています。

現代の短い管のトランペットの煌びやかな音は魅力的で、この音色と機動性を併せ持っているため、今日の花形的存在の楽器へと定着しました。

しかし、以前の「長管トランペット」も、トランペット本来の魅力を兼ね備えている楽器で、一部の楽曲では、この長い管長を持つトランペットでないと出すことができない音もあります。

ピストン式とロータリー式のタイプの違いとは?

トランペットにはヴァルブ装置の違いで、「ピストンバルブ式」と「ロータリーバルブ式」のトランペットがあります。

ロータリーバルブ式のトランペットは「ロータリートランペット」と呼ばれ、ドイツやオーストリアではメインの楽器として使われ、またピストンバルブ式のトランペットをドイツでは「ジャズトランペット」と呼んでいます。

ピストン式とロータリー式では、管の長さや大まかな仕組みはそんなに違いはありませんが、大きく異なる点は、ロータリー式はヴァルブ装置がピストンではなく、ホルンと同じロータリーヴァルブが採用されているという点です。

また、ロータリー式は管の太さとベルの広がり方が独特で、ベートーヴェンやブラームスなどドイツの作曲家の重厚な楽曲の曲想に相応しい音色を特徴とします。

そのため、ドイツとオーストリアのみならず世界中のオーケストラで、この手の楽曲を演奏する際は、ロータリートランペットに持ち替えて演奏されるケースが多いです。

トランペットは調性の違いで様々な種類がある

吹奏楽やジャズで用いるトランペットは、B♭(シ♭)音を基調とするB♭管を使用しますが、クラシックの独奏曲やオーケストラでは、B♭管以外にC管、D管、E♭管など様々な調性のものが使われ、またオクターヴ高いピッコロトランペットも使用されます。

このような様々な種類のトランペットを使用するのは、ヴァルブが装備されていない時代に、その楽曲の調性に合わせて、長さの違うトランペットが用意されていた背景があります。

楽曲で使用する管の調性に移調して楽譜は記譜されていますので、楽曲の調に合った管に持ち替える方が読譜がしやすく、何よりもその楽曲の調に合った管を使用すると、ドミソなどの主要な音をヴァルブを押さないオープンな音で演奏ができるという利点があります。

ただオーケストラでトランペットを使用する場合は、特殊なケースを除いて基本的にC(ド)音を基調とするC管トランペットを用いるのが一般的です。

フラット系の楽曲が多い吹奏楽とは異なり、オーケストラではシャープ系の楽曲も演奏しなければいけないので、フラットが付いていないハ調の楽器がオーケストラでは好ましく、B♭管よりも明るい音色を備えるC管トランペットが、オーケストラの音色に望ましいことがあります。

仲間の楽器~コルネット・フリューゲルホルン~

トランペットの仲間には、「コルネット」という金管バンドのメロディを担当する楽器と、「フリューゲルホルン」というジャズの分野でメロウなソロを聴かせる楽器があります。

どちらの楽器もトランペットと同じで、ヴァルブが3本のB♭管で長さも同じになります。ルーツはトランペットと異なり、トランペットは軍隊や儀式で合図をするときに使用する金属製のラッパがルーツで、コルネットとフリューゲルホルンは、動物の角を吹き鳴らすホルンがルーツになります。

イタリア語で「小さいホルン」という意味のコルネットは、郵便馬車が到着を知らせる小さなホルン(ポストホルン)から発展しています。

「翼のホルン」という意味のフリューゲルホルンは、狩りや軍隊で合図をした角笛から発展したもので、獲物を両翼から追い込んだからという説もあります。

どちらの楽器もトランペットにはない独特な柔らかい音色を備えていて、トランペットの仲間の楽器として持ち替え用で用意しておけば、いつもとは異なる音色の雰囲気を楽しむことができます。

トランペットに搭載されているトリガーの役割

トランペットにはトリガーと呼ばれるものが付いていて、トリガーを操作することによって、第1と第3ピストンの迂回管の長さを伸ばし音程の修正を行っています。

ヴァルブを2本以上押したときに音程が高くなってしまうため、トリガーが必要になります。ヴァルブの迂回管は、各楽器の管の全長に比例した長さになっているので、トランペットの倍の長さのユーフォニアムは、各迂回管の長さも倍になっています。

ヴァルブを一つ押すと管全体が長くなった状態になるので、二番目のヴァルブを押したときに長さが不足してしまいます。

仮にC管トランペットの一番ヴァルブを押したとすると、B♭管の長さになりますが、そのまま第二や第三ヴァルブを押しても、迂回管の長さはC管用の長さしかありません。

そこでB♭管の迂回管と同じ長さになるように管を抜いて、正しい音程にするのがトリガーの主な役割になります。トランペットに限らずヴァルブを二つ以上押したときは当然ながら音程が高くなってしまうので、ホルンの場合はベルに差し入れた右手で調節し、ユーフォニアムやチューバの場合は四番目のヴァルブを使用して改善しています。

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