協和音の音程の仕組み

西洋音楽においての協和音の変遷は音律の変遷でもあり、協和音の基本は単純な周波数比。
美しく響く協和音を求めるために、純正律という音律も用いられるようになります。

ハーモニーによる豊かな表現

音楽はメロディだけでも十分に楽しめ成り立ちますが、メロディにハーモニーを加えることによって、音に厚みが増し音楽の楽しみも倍増します。

音楽を制作する側も、ハーモニーによってより豊かな表現力を利用することができます。ピッチが異なる2つ以上の音を組み合わせたものを和音といい、協和する和音を協和音、協和しない和音を不協和音といいます。

ハーモニーと和音は同義語として使われることもありますが、ハーモニーは和音の進行までを含みます。

協和音の基本は単純な周波数比

西洋音楽において、和音という認識のもとで音を扱い始めたのは9世紀頃と考えられています。グレゴリア聖歌の時代は、ユニゾン(1度あるいはオクターヴ)を基本としていましたが、次第に完全5度、完全4度を協和音として用いるようになりました。

それまで協和音として用いられなかったのは、ピタゴラス音律による和音の考えがあった為です。ピタゴラス音律では、同時に鳴る音の基本周波数の比が単純であるほど、和音は協和するという考え方です。

同じ音(1度)だと周波数比は1/1、オクターヴ(完全8度)は2/1、完全5度は3/2、完全4度は4/3となり何れも単純な比となります。

こういった音程の和音は美しく響いていたので、協和音として利用されましたが、ピタゴラス音律では3度の音程は単純な周波数比にはならないので、美しく響かず協和音には含まれていませんでした。

ピタゴラス音律から純正律

純正律が広まるとともに、ピタゴラス音律では協和音に含まれなかった3度や6度といった音程が、協和音として利用されるようになっていきます。

3度を協和音として使用し始めたのは14世紀頃のことです。純正律では長3度の周波数比は5/4、短3度の周波数比は6/5、長6度の周波数比は5/3、短6度の周波数比は8/5と、比較的単純な比になります。

このため和音は澄んだ響きとなり、3度や6度の和音は協和音として多く用いられ、広がっていくことになります。協和音の幅が広まるにつれ、和音の進行はユニゾンや同じ動きの旋律を重ねたものから、より複雑なものへと進化していきました。

純正律の音程と倍音系列の周波数の関係

純正律の音程は、倍音系列の周波数比で構成されています。周期的な複合音での各成分は倍音系列になっていて、各成分の周波数は基本周波数の整数倍になっています。

倍音系列における基本音と第2倍音の周波数比は1:2、第2倍音と第3倍音の周波数比は2:3、第3倍音と第4倍音の周波数比は3:4、第4倍音と第5倍音の周波数比は4:5、第5倍音と第6倍音の周波数比は5:6となり、これらの周波数比は純正律のオクターヴ(完全8度)、完全5度、完全4度、長3度、短3度と同じになります。

純正律に従った音階で協和音を奏でたときは、各成分の間で周波数が一致することが多く、不協和音の起因となる干渉する成分が少なくなり、美しい響きの音が鳴ります。

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