交響曲 第8番 ヘ長調 Op.93 第1楽章【ベートーヴェン】~音楽作品 名曲と代表曲
ベートーヴェンの交響曲の中で独特の佇まいを見せる異質の作品
「交響曲第8番」Op.93は、1811年から翌1812年にかけて作曲された8番目の交響曲で、ベートーヴェンの交響曲の中では比較的小規模で、従来の古典的な形式に則ったものですが、独創的な工夫と表現にあふれた傑作です。
ベートーヴェン自身も「第7番」を“大きな交響曲”、「第8番」を“小さな交響曲”と呼び、とても気に入り自信を持っていたようです。
「第7番」の方に人気が集中したのに対し、ベートーヴェンは「聴衆がこの第8番を理解できないのはこの曲があまりに優れているからだ」と語ったといいます。
交響曲「第7番」の完成後に手掛けられたこの「第8番」は、ボヘミアの温泉地に滞在中に楽想が練られ、1812年夏に作曲が開始され1812年10月にリンツで完成しました。
弟の結婚式に出席するためリンツを訪れたベートーヴェンの手で、草稿に「1812年10月リンツにて」という書き込みがなされています。
初演は1814年2月27日、ベートーヴェン作品による音楽会で、好評の「第7番」などの再演と同時に行われました。なお、ベートーヴェンの9曲の交響曲のうち、この「第8番」のみ誰にも献呈されませんでした。
ベートーヴェンもまた同じ時期に、交響曲では「第5番」と「第6番」、「第7番」と「第8番」というように、相異なる性格の楽曲を書いています。
楽曲全体の明るい調子や軽やかなトーン、また採用されているへ長調はパストラーレの調性であり、この調性の特質などから交響曲「第8番」も、一種の「田園交響曲」であると言えるでしょう。