夢【ドビュッシー】~音楽作品 名曲と代表曲
音楽界の革新者が描く夢想の旋律
『夢』は1890年頃に作曲されたピアノ独奏曲で、『夢想』または『夢想曲』とも称されています。
1884年22歳であったドビュッシーは、カンタータ「放蕩息子」によってローマ大賞を受賞し、受賞の援助によってローマへ留学していました。その留学から帰国した3年後の1890年に「ベルガマスク組曲」に着手しますが、ちょうどその頃に『夢』も作曲されています。
同曲を作曲していた頃のドビュッシーは、まだ作曲家として駆け出しの頃で、経済的な苦境から必要に迫られて書いた曲と伝えられています。
ドビュッシー自身、この作品の出来栄えには満足していなくて、「ロマンティックなタイトルに惹かれて書いたに過ぎない」と評し、当初は作品の出版を控えていましたが、その後の1908年に出版されることになりました。
当時の作品としては、『ベルガマスク組曲』『2つのアラベスク』などの初期のピアノ小品や歌曲が有名ですが、これらの作品を手掛ける前にドビュッシーは、ドイツ・バイエルン州でのバイロイト音楽祭を1888年、1889年と2度訪れています。
また、パリで開かれた万国博覧会でジャワ音楽(ガムラン)を耳にするなど、その後のドビュッシーの音楽に大きな影響を与える体験をしています。
『夢』はタイトル通り夢幻的な雰囲気に満ちており、初期の作品ということもあり、比較的明確な調性と親しみやすい旋律で、分散和音に乗った甘美な旋律による部分とコラール風の中間部から成ります。