組曲《美しきパースの娘》から 「セレナード - 小さな木の実」
「小さな木の実」として知られることになる歌の原曲
『美しきパースの娘』は、1866年に作曲された全4幕のオペラ・コミックで、ウォルター・スコット(Walter Scott/1771-1832)の小説『The Fair Maid of Perth』(1828)を原作としています。
ジュール=アンリ・ヴェルノワ・ド・サン=ジョルジュとジュール・アドニスが台本を作成し、1867年12月26日にパリのリリック座において初演が行われました。
14世紀の内乱期スコットランドの首都パースが物語の舞台で、婚約間近のキャサリンとヘンリーが些細なトラブルが元で言い争いになり、領主やジプシーの女王らを巻き込みながらも、最後には結ばれるという愛憎劇です。
歌劇自体は大好評とはいかず、現代でも殆ど上演されることはありませんが、音楽に関してはビゼー自身が演奏会用の組曲として第2幕から5曲を選択し、「前奏曲」「オーパード」「セレナード」「行進曲」「ジプシーの踊り」の構成で演奏会用の組曲としました。
『美しきパースの娘』からは一般に、第2幕と第4幕で歌われるアリア「セレナード」と、後にエルネスト・ギローによって「アルルの女」の第2組曲に転用された、フルートソロが印象的な「メヌエット」が有名な旋律として知られています。
第2幕と第4幕で歌われるアリア「セレナード」は、NHK「みんなのうた」で放送されたことで有名で、「小さな木の実」として知られることになる歌の原曲です。
オペラではヘンリーが恋人を取り戻そうと切々と歌い上げるアリアですが、「小さな木の実」では父を亡くした少年の物語性のある歌になっています。
ギローによって転用された「メヌエット」の旋律は、『美しきパースの娘』第2幕のロスシー伯爵とマブの二重唱の伴奏を編曲したもので、こちらは原曲とは大きく異なっています。