交響曲第1番 ハ短調 Op.68 第4楽章
他の追随を許さない劇的で壮大な第4楽章
この交響曲はハ短調で書かれていますが、これはベートーヴェンの交響曲第5番(運命)と同じであり、また第4楽章の第1主題は、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章の「歓喜の歌」を思わせるものとなっています。
第4楽章も第1楽章と同様に序奏付きのソナタ形式で、続く主部で発展させられる諸動機が提示されます。冒頭ヴァイオリンのフレーズは、やがて主部の第1主題になるものであり、さらにピウ・アンダンテでホルンがアルプスのホルンを模した旋律を奏でます。
主部のアレグロ・ノン・トロッポ、マ・コン・ブリオに入ると、ヴァイオリンが低音域で第1主題を演奏しますが、これはベートーヴェンの「第九」終楽章の歓喜のテーマとの類似性が指摘されるものです。
第1主題の展開に次いでホルンのテーマが出され、引き続いて弦が第2主題を提示します。再現部に入って終曲する直前に和声的な主題が大きく歌い出されますが、このようなプロテスタント的でコラール的な主題処理の中に、ブラームスの根本的な創作態度の在り方を見ることができます。
完成までに21年の歳月を要した『交響曲第1番』ですが、そのうちの大半が第4楽章の作曲に費やされ、第1楽章~第3楽章は29歳までにほぼ構想としてのスケッチができていましたが、この第4楽章にあたっては劇的で壮大な完成で結論づける必要があるため、作曲家また人間としての成長に長い年月を必要としたのでしょう。