交響的物語 《ピーターと狼》 Op.67 第2曲
子供の音楽教育のために書かれたユニークな作品
交響的物語 《ピーターと狼》 Op.67は、1936年に作曲された子供の音楽教育のための音楽作品で、このジャンルにおいてはブリテンの「青少年のための管弦楽入門」と並ぶポピュラーな作品です。
台本はロシアの民話を基にプロコフィエフ自身が担当し、ナレーター付きの「子供のための交響的物語」として作曲され、初演は1936年5月2日にモスクワの児童劇場で行われました。
帝政ロシアからソヴィエト連邦へと移り変わったロシアの激動期を生き抜いたプロコフィエフは、十代で作曲家として活動します。
音楽家サークル「現代音楽の夕べ」に参加しながら、ストラヴィンスキーと同様に大胆な作品を次々と発表していきました。
そしてプロコフィエフが26歳の時にロシア革命が勃発し、若かりし頃のプロコフィエフにはまだ革命の意義が理解することができず、ロシアを離れ日本を経由してアメリカへと亡命します。
アメリカで数年間過ごした後、今度はパリへ移り約10年間滞在することになりますが、その間に2回程ソヴィエトを訪問しています。
その訪問の際に新しいソヴィエトの実態を目の当たりにし、新しく生まれ変わった祖国の大衆たちが、音楽に大きな関心を寄せているのを肌で感じたことをきっかけに、1932年故国ソヴィエトへと戻ります。
故国に戻ってからのプロコフィエフの音楽は大きく変わり、聴衆たちの志向に応えようと子どもたちのための作品も多く見られるようになり、その中の一つが交響的物語 《ピーターと狼》 Op.67です。
第二次世界大戦間近の1936年に書かれた、この交響的物語『ピーターと狼』は子どものために書かれたことから、旋律が親しみやすく色彩も豊かで起伏もあり、聴いていてとても楽しい作品として人気となりました。
ロシアの民話をもとにプロコフィエフが自ら書き下ろしたこの台本には、狼と戦うピーターの姿を通して、ナチス・ファシズムへの風刺が込められていたと言います。
童話の筋書きはもちろんのこと、この楽曲には子どもたちにクラシック音楽を親しんでもらうための工夫が散りばめられています。
物語の登場人物
物語の登場人物(動物)には、それぞれオーケストラの特定の楽器が割り当てられ、オーケストラの楽器紹介の趣もあり、全編を通して場面を説明するナレーションが入っています。またそれぞれには固有の主題が割り当てられ、ライトモティーフ風に扱われています。
- 小鳥【フルート】
- 鶩【オーボエ】
- 猫【クラリネット】
- お祖父さん【ファゴット】
- 狼【3本のフレンチホルン】
- 猟師の撃つ鉄砲【ティンパニやバスドラム】
- ピーター【弦楽合奏】
物語を進めていくナレーションと共に音楽を聴いているうちに、様々な楽器やオーケストラの仕組みが楽しみながら理解できる構成で、ナレーションによってまた楽曲が違った味わいを見せるのもこの作品の醍醐味でユニークなところです。
ミュージカルや絵本にもなっているので、子どもや家族と一緒に聴き比べてみるのも楽しい作品で、1946年にはウォルト・ディズニー・カンパニーによってアニメーション映画化もされています。