チューニング(スネア)
ドラムのチューニングとは、太鼓の皮の張り具合等を調整して、音程や音の響きを変えることです。
ギターやピアノのチューニング(調律)とは異なり、定められた音にチューニングするわけではないので、自分の好みの音や演奏スタイルに合わせた音に仕上げていきます。
一般的なチューニング方法
自身の叩く音がチューニングによって決まりますので、チューニングは演奏者にとって気を使う作業でもあります。
どのようなドラムでもチューニングが合っていないと、ポテンシャルを発揮することが難しくなるので、好みの音や操作性などを向上させるために、チューニングはしっかりと行う必要があります。
ドラムのチューニングでこれが絶対という決まり事はありませんが、一つ大切なことは、テンション・ボルトをどの程度回すとピッチにどれほどの影響があるのかという感覚を掴むことです。
ドラマーにとっては基本の作業になりますので、普段からその感覚を養うことを心掛けて、実際に何度も試して自身の感覚で覚えるようにしましょう。
ドラムをチューニングする際は、とにかく各ボルトのテンションを均等にしながら、少しずつボルトを回していくことがポイントです。
ドラムはヘッドの張り具合によって音が高くなったり低くなったりしますので、ヘッドの交換時はもちろんのこと、ドラムを演奏する前はチューニングを行うようにしましょう。
チューニングは打面・裏面ともに、リム周囲のボルトをチューニングキーを使用して緩めたり締めたりしながら行います。ボルト付近をスティックで叩いて音の高さと張り具合をみながら締めていきます。
①シェル特にエッジ部分をきれいに拭きヘッドを乗せ、リムの周囲にあるテンションボルトを緩んでいる状態から指で軽く止まるところまで締めます。
②数字順のように対角線上のテンションボルトを、チューニングキーを使用してヘッド全体のシワがなくなるまで1つ1つ少しずつ回して締めていきます。
③各テンション・ボルト付近をスティックで軽く叩きながら、全てのテンションボルトが均一になるようにボルトを回して締めていき微調整を行います。
④ボトム・ヘッド(裏面ヘッド)のチューニングを①~③の手順で同様に行います。
⑤打面を叩きながら表裏のバランスの最終調整を行います。その際にドラムの中心を軽く指で押さえて、リムから約2~3cmのラグのすぐ内側を叩き、音程を確認しながらチューニングを行うとより均一になります。ドラムの中心を押さえることによって、ヘッドと自身の指の間に奏でられる音を聴き分けています。
ラグごとにチューニングを行う方法
この方法はチューニングをシンプルにすることにあり、各々のラグ付近をタップして音を出し、その周辺で奏でられる共鳴を聴き分けます。
上図の1と7のラグのチューニングから始めたとすると、次は4と10と言ったように全てのラグの音階調整を行います。
この行程を終えれば、ドラムヘッドのチューニングは完了となります。その状態からさらに音階を調節したい場合は、また同様の手順を行うことによって求める音を作り出していきます。
ラグの音程が揃わない場合
1つのラグの音程が高すぎてロッドのテンションが緩んでいる場合は、対角線上のラグが締まりすぎていることから生じる問題です。
このようにラグの音程が揃わない場合は、上図の1-2の関係を理解する事で、適切なドラムのチューニングを可能にします。
スネアヘッドの交換方法
ヘッド交換の時期は演奏者によって様々で、破れるまで使い続けて交換するケース、スティックがよく当たる部分が凹んできて交換するケース、表面のコーティングが剥がれた時点で交換するケースなどがあります。
いずれのケースでも使い込んでいくうちに、音や叩いた感触は少しずつ変化していき、1台のスネアを様々なチューニングで使用している場合は、チューニングが上手く決まるポイントも変わってきますので、その変化が大きくなる時期が交換のタイミングのポイントとなるでしょう。
ヘッド交換の手順
手順①
- チューニングキーを使用してテンションボルトを緩めていきます。
- 2つのキーを使用して対角線上のボルトを同時に緩めると作業効率が良く、フープに偏った負荷がかかる可能性を少なくすることもできます。
手順②
- ある程度ボルトが緩みだすと後は手で回していくと早くなります。
- ボルトがラグから外れるまで全てのボルトを緩めていきます。
手順③
- 全てのボルトを緩めたらフープとヘッドをシェルから取り外します。
- 急ぐ場合はフープの穴にボルトを挿したままでも大丈夫ですが、余裕があればフープから取り外しボルトのチェックと清掃を行うと良いでしょう。
手順④
- ヘッドを外し終えたらシェルのエッジを乾いた布で乾拭きしておきます。
- 楽器用のクロスや柔らかめのタオル、また古着のTシャツなどでも構いません。
手順⑤
- シェルは密閉空間ではないため、内側の縁に埃が溜まっていることもあります。
- タオルなどを使用してヘッド交換の機会に綺麗にしておきましょう。
手順⑥
- 新品のヘッドは縁の丸くなった部分を指で揉みほぐしておくと、シェルとの馴染みが良くなります。
手順⑦
- シェルにヘッドを真っ直ぐ乗せて、どこかが浮いたり傾いたりしていないかチェックします。
- 向きは特に問題ありませんが、ロゴの位置を毎回揃えておくと、セッティングの際の目印として活用できることもあります。
手順⑧
- フープもヘッドに乗せる前に乾拭きしておき、この部分はスティックの木くずや埃が溜まる箇所なので念入りに行います。
手順⑨
- フープを真っ直ぐに乗せ、ヘッドとシェルがしっかりと落ち着くポイントを確認します。
手順⑩
- ボルトの頭の部分を触るようにして、テンションボルトをラグに差し込んでいきます。
- ボルトの軸の部分を触るとグリスで指が汚れて、他の場所にも付いてしまう恐れがあるので気を付けるようにしましょう。
手順⑪
- ボルトがフープから浮いている間は、ヘッドにテンションがかからないので、まずはフープに接触するところまで締めていきます。
- 緩めるときと同様に、対角線上の2本のボルトを同時に締めていくと効率が良いでしょう。
手順⑫
- ボルトがフープにあたり始めたら、回すのを1本ずつにしてピッチの調整に移ります。
- この行程からは回す角度も少なめにし、ヘッドの中央を軽く叩いて音を確かめながら、求めるピッチに近づけていきます。
手順⑬
- ある程度のピッチになってくると、ヘッドの中央を押さえてシェルに馴染ませます。
- 音が発生することもありますが、気に留めないでしっかりと体重をかけてやることで、チューニングの安定度が増します。
- この作業は安定した平坦な場所で行うことが大切で、スタンドにセットした状態では絶対に行わないようにしましょう。
手順⑭
- ヘッドが伸びたことによって若干ピッチが下がっているはずなので、さらに少しずつボルトを締めていきます。
手順⑮
- 各々のボルトから1cmくらいの箇所を順番に指で軽く叩いて音を聴き、明らかにピッチが異なる箇所はボルトを回して調整し、スナッピーはOFFにしておき、均一なヘッドの張り具合いを目指します。
- 上手く調整するポイントは、ピッチの基準となるボルトを1つ決めて、そこは回さないようにすることで、微妙なピッチの違いは聴き取りづらいものですが、トーンを声に出して模倣してみると意外とわかりやすくなるケースが多いです。
手順⑯
- ヘッドが均一に張り終えた状態でピッチ調整も完了すると、スナッピーをONにしてスティックで叩いて最終確認を行います。
- 必要に応じてピッチやスナッピー・テンションの微調整も行い作業は完了となります。
注意点
新品のヘッドはこの一連の作業で完全に馴染むというわけではなく、ヘッドの種類によって程度の差はあるものの、ほとんどの場合は張りたての時期はヘッドが少しずつ伸びていき、そのためチューニングが徐々に下がっていくという現象が起こります。
場合によっては突然チューニングが大きく下がることもあり、チューニングが安定するには実際に叩いていく中で微調整を繰り返すしかないので、ある程度の時間を必要とします。
テンションボルトのワッシャーも大事なパーツ
テンションボルトには必ずワッシャーが付いていますが、金属やナイロン製のワッシャーの役割は、ボルトとフープが直接擦れ合うことによる摩耗を防ぐことで、ボルトのスムーズな動きを助ける大事なパーツになります。
ヘッド交換時に紛失しやすいパーツでもあるので、必ずボルトとセットで扱うことが重要です。紛失したまま使い続けると、ボルトが滑らかに回らない上に、フープの穴周辺が摩耗しフープの交換が必要になることもあります。