曲の速さを指示する言葉を速度標語といい、曲の雰囲気などを表すこともあります。

速度標語は相対的なもので、明確な数値に換算できるものではありません。

速度の変遷 [英:tempo term]

西洋音楽ではJ.S.バッハのバロック時代までは、作曲者が演奏のその場に居合わせたため、楽譜に楽曲の速度(テンポ)を記すという習慣はありませんでした。

バロック期に入り第三者が楽譜を見て演奏する機会が増えた為、少しずつ速度が言葉で記されるようになりますが、絶対的な速度を表記するものではなく気分や表現を同時に表すものでした。

速度標語の基本となるのは、「中庸の速さで」のModerato(モデラート)です。

基本的な速度標語

レント

Lento

外国語表記

〔伊:lento〕
〔独:langsam〕

意味

緩やかに、遅く
物理的に時間がかかる様を表し、「気長に、のろい」などの意味で使われることもあります。ドイツ語のlangsam(ラングザーム)も、ドイツ系の作曲家に度々用いられています。

ラルゴ

Largo

外国語表記

〔伊:largo〕

意味

幅広く」「緩やかに
イタリア語で「広い」という意味。1音の幅を広くという意味合いから、緩やかな速度記号として使用されるようになりました。発想記号のlargamenteも、ほぼ同じ意味になります。

ラルゲット

Largetto

外国語表記

〔伊:larghetto〕

意味

Largoよりもやや速く
イタリア語では「-etto」を形容詞の末尾に付けるとその意味が弱められます。この場合では「largoほどゆっくりではなく」という意味になります。

アダージョ

Adagio

外国語表記

〔伊:adagio〕

意味

緩やかに、ゆったりと
イタリア語では他に、「静かに」や「慎重に」などの意味もあります。ソナタや交響曲、協奏曲などでは、度々第2楽章にこの指示があります。

グラーヴェ

Grave

外国語表記

〔伊:grave〕

意味

重々しく、ゆったりと
元々の意味は「厳粛に、深刻な」などです。重々しさを表現する結果として、ゆっくりという意味が加わります。速度標語として使われる他に、曲の表情を説明する発想標語としても使われます。

アダージェット

Adagietto

外国語表記

〔伊:adagietto〕

意味

Adagioよりやや速く
イタリア語では「-etto」を形容詞の末尾に付けると、その意味が弱められます。この場合では、「adagioほどゆっくりではなく」という意味になります。

アンダンテ

Andante

外国語表記

〔伊:andante〕

意味

ゆっくり、歩くような速さで
元々の言葉は、イタリア語で「行く、進む」などの意味を持つ「andare(アンダーレ)」で、穏やかな性格の楽曲に使われることが多いです。

アンダンティーノ

Andantino

外国語表記

〔伊:andantino〕

意味

Andanteよりやや速く
イタリア語では「-etto」と同じように、「-ino」を形容詞の末尾に付けてもその意味が弱められます。この場合では、「andanteほどゆっくりではなく」という意味になります。

モデラート

Moderato

外国語表記

〔伊:moderato〕

意味

中庸の速さで」「中ぐらいの速さで
元々の言葉は英語の「medium、middle」などと同じで、イタリア語では「適度な、程よく」などの意味があります。

アレグレット

Allegretto

外国語表記

〔伊:allegretto〕

意味

やや速く」「Allegroより少し遅く
イタリア語では「-etto」を形容詞の末尾に付けると、その意味が弱められます。この場合では、「allegroほど速くなく」という意味になります。

アレグロ

Allegro

外国語表記

〔伊:allegro〕

意味

快活に」「速く
元々は「明るく、元気に」などの意味で、ここから速いテンポの楽曲の速度記号として、使用されるようになりました。

ヴィヴァーチェ

Vivace

読み方

〔伊:vivace〕

意味

活発に」「速く
allegroより速く活き活きと鮮やかなイメージで。また、「非常に、きわめて」という意味の接尾語である「-issimo」を付けたvivacissimo(ヴィヴァーチッシモ)「非常に速く」も度々使われます。

ヴィーヴォ

Vivo

外国語表記

〔伊:vivo〕

意味

「活発に」「速く
vivaceとほぼ同じ意味。allegroと併用したallegro vivo(アレグロ・ヴィーヴォ)「速く、活発に」もよく使われますが、こちらはallegroの意味を強調した使い方。

プレスト

Presto

外国語表記

〔伊:presto〕

意味

急速に」「非常に速く
vivacissimoよりも速いテンポを指定する際に用いられますが、使用頻度はvivacissimoよりずっと多く、次第に熱狂的になり、テンポが速くなっていくような楽曲の最後に度々見られます。

プレスティッシモ

Prestissimo

外国語表記

〔伊:prestissimo〕

意味

きわめて速く
「-issimo」は「非常に、きわめて」という意味の接尾語で、prestoの最上級を表します。演奏可能な最も早い速度を、指定する場合に度々用いられます。

Largo(ラルゴ)、Grave(グラーヴェ)、Vivo(ヴィーヴォ)、Vivace(ヴィヴァーチェ)、これらの速度標語は純粋に速度だけではなく、表現の領域にも触れていることがわかります。

Andante(アンダンテ)は注意が必要で「歩くような速さで」とありますが、ロマン主義に至るまでの古典派までは、Moderato(モデラート)より速いこともありました。

現在では「ややゆっくりと」という位置にあります。

それぞれの単語の語尾が変化して、意味が強まったり弱まったりします。

+issimo(強まる)

・Lentissimo (レンティッシモ)
<極めて遅い>

 

・Largissimo (ラルギッシモ)
<極めて幅広く、緩やかに>

 

・Adagissimo (アダージッシモ)
<極めて緩やかに>

 

・Allegrissimo (アレグリッシモ)
<極めて速く>

 

・Vivacissimo (ヴィヴァーチッシモ)
<極めて活発に、速く>

 

・Prestissimo (プレスティッシモ)
<極めて急速に、可能な限り速く>


+etto(弱まる)

・Larghetto (ラルゲット)
<ラルゴよりやや速く>

 

・Adagietto (アダージェット)
<アダージョよりやや速く>

 

・Allegretto (アレグレット)
<やや快速に>


+ino(弱まる)

・Andantino (アンダンティーノ)
<アンダンテよりやや速く>

 

演奏は途中での変化があり表現力が豊かになります。速度の変化を指示する場合の標語。

リタルダンド

ritardando(rit. / ritard.)

外国語表記

〔伊:ritardando〕
〔仏:cedez〕

解説

だんだん遅く、緩やかに
遅れる、遅らせるという意味のritardareの変化形。ゆったりとした曲調に移るときや、曲の終結部分などに登場します。もとのテンポに戻すa tempoとのセットで用いられることも多い。

ラッレンタンド

rallentando(rall.)

外国語表記

〔伊:rallentando〕

解説

だんだん遅く、緩やかに
速度を緩める、遅くするという意味のrallentareの変化形で、ritardandoとほぼ同じ意味。同じような意味を持つ記号として他に、slentando(スレンタンド)もあります。

アッチェレランド

accelerando(accel.)

外国語表記

〔伊:accelerando〕

解説

次第に速く
ritardandoと同じように、もとのテンポに戻すa tempoとのセットで用いられたり、テンポの速い曲調に移行する場合に用いられることが多い。同じような意味の記号として、affrettando(アフレッタンド)もあります。

ストリンジェンド

stringendo(string.)

外国語表記

〔伊:stringendo〕

解説

だんだんせき込むように
次第に緊張感を増しながら、締め付けていくような指示。名詞のstretta(ストレッタ)も同様な意味で使われます。

突然の変化を指示する場合の標語。

ピウ・モッソ

piu mosso

外国語表記

〔伊:piu mosso〕

解説

今までより速く
piuは「~より多く、より一層」などの意味で、「mosso」以外にも「piu lento、piu allegro」「piu p」など、様々な単語に結び付けて使われます。「mosso」は「速度をもって」の意味。「andante mosso(速めのアンダンテ)」のように、他の速度記号と合わせて使うこともあります。

メーノ・モッソ

meno mosso

外国語表記

〔伊:meno mosso〕

解説

今までより遅く
「meno」は「~より少なく、それほど~でなく」などの意味。「mosso」を省略して「poco meno(幾分テンポを落として)」のように使用されることもあります。

リテヌート

ritenuto(riten.)

外国語表記

〔伊:ritenuto〕

解説

すぐに速度を緩める
ritardandoと見た目は似ていますが別物です。その部分だけ速度を緩めるという意味でも使われます。ショパンのバラード第1番の終結部では、「ritenuto」と「accelerando」が頻繁に交代しています。

柔軟に加減しながら、自由なテンポでの演奏を指示する場合の標語。

テンポ・ルバート / センツァ・テンポ

tempo rubato /senza tempo

外国語表記

〔伊:tempo rubato / senza tempo〕

解説

「速度を自由に加減して
rubatoには「盗む」senzaは「離れて」などの意味がありますが、どちらの記号でも演奏者はテンポを気にせずに、自由に演奏して良い。a oiacereもほぼ同じ意味。

テンポ・アド・リビトゥム

tempo ad libitum

外国語表記

〔伊:tempo ad libitum〕

解説

自由な速度で」「速度を随意に
通常、速さの自由が許されるときに示されますが、声部や楽器のパート、カデンツを加えることなどの自由が許されるときにも用いられます。ジャズではアド・リブといい、「自由に」をさらに広く解釈して、テーマを自由に変奏した即興的独奏を意味し、奏者のテクニックを発揮するところになっています。

テンポ・ア・ピアチェーレ

tempo a piacere

外国語表記

〔伊:tempo a piacere〕

解説

任意の速さで」「自由な速さで
元々の意味は「自由に」。tempo rubatoやsenza tempoなどと同じようなニュアンスで用いられます。

テンポが変化することなく、一定の正確な速度で演奏することを指示する場合の標語。

テンポ・ジュスト

Tempo giusto

外国語表記

〔伊:tempo giusto〕

解説

正確な速さで」「一定の速度で
ショパンのワルツでは、数曲にこの速度指定が用いられています。

イン・テンポ

in tempo

外国語表記

〔伊:in tempo〕

解説

正確な速さで」「一定の速度で
稀にtempo primoのように使われることもあります。

リステッソ・テンポ

L’istesso tempo

外国語表記

〔伊:l’istesso tempo〕

解説

同じ速さで
拍子が変わっても、1拍の長さは変えずに演奏するという指示。

速度の変化をやめ、もとの速さに戻す、部分的な速度の変化を指示する場合の標語。

ア・テンポ

a tempo

外国語表記

〔伊:a tempo〕

解説

もとの速さで
ritardandoやaccelerandoの指示の後に、もとの速さに戻すために用いられます。稀にtempo primoの代わりに用いられることもあります。

テンポ・プリモ

Tempo I /Tempo primo

外国語表記

〔伊:tempo primo〕

解説

初めの速さで
両方の書き方を合わせた「Tempo Ⅰmo」という表記法もあります。

コーメ・プリマ

come prima

外国語表記

〔伊:come prima〕

解説

初めのように
「come」は「~のように」という意味。a tempoのように使用されることもあります。

速度そのものを停めてしまう時に指示する場合の標語。

フェルマータ

外国語表記

〔伊:fermata〕

解説

ほどよく伸ばす
イタリア語で停車場の意味を持つフェルマータは、臨時に拍の進行を停止させ、音符や休符に付ける延長記号です。讃美歌(コラール)では曲の段落を示したり、協奏曲(コンチェルト)では自由に即興的な演奏をする部分のカデンツァという箇所を示したり、終止記号として楽曲の終りを示すために複縦線上などに置かれて用いられることもあります。フェルマータの伸ばし具合は、演奏者の裁量に任されています。

その他の速度標語

ドッピオ・モヴィメント

doppio movimento

外国語表記

〔伊:doppio movimento〕

解説

倍のテンポで
「doppio」は英語のdoubleと同じ語源で、「2倍の」という意味。ショパンのピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調の第1楽章や、ノクターン第13番 ハ短調などにこの表記が見られます。

テンポ・ディ ~

Tempo di ~

外国語表記

〔伊:tempo di ~〕

解説

~のテンポで
「Tempo di valse」は「ワルツのテンポで」という意味。ハイドンやモーツァルトの交響曲 第3楽章「メヌエット」などでは度々、「Tempo di menuetto」の表記が見られます。

コッラ・ヴォーチェ / コッラ・パルテ

colla voce /colla parte

外国語表記

〔伊:colla voce / colla parte〕

解説

声部に従って
自由なテンポやリズムの声楽パートに合わせて、器楽が伴奏すること。「colla voce」はオペラのアリアなど、声楽のカデンツァやレチタティーヴォに使用され、「colla parte」は協奏曲など、独奏楽器が自由に演奏する場面で使われます。「colla voce」は、col canto(コル・カント)と表記されることもあります。

※速度記号は曲の冒頭に記されるため、一般的にはアルファベットの大文字から記します。

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