各楽器を選ぶ際の注意点~金管楽器編~
トランペットを選ぶ際のポイント
初めての場合はB♭管を選択する
- トランペットには様々な調性の種類がありますが、初めて購入して練習する場合は、一般的にC(ド)音の指使いでB♭(シ♭)音が出るB♭管を選択するといいでしょう。
- オーケストラで使用する場合には、全音高いC管や半分の長さのピッコロトランペットなども必要になりますが、吹奏楽やジャズで使用する場合には、基本的にはB♭管1本で対応することができます。
- B♭管トランペットにも様々な種類があり、デザインや重量が異なるモデルが多く存在しますので、初心者の方の場合は、極端に重い楽器は避け、構えやすさや自分の身体に合ったものを選択し、あまり負担のかからない楽器を選ぶようにしましょう。
開放の音をチェックする
- トランペットは、ヴァルブを押したときの音程はトリガーで補正することができますが、ヴァルブを押さない状態での開放音は補正することができないので、開放音が極端に高いものや低いものは避けるようにしましょう。
ピストンヴァルブをチェックする
- ピストンヴァルブはトランペットの中枢となる部分ですので、ヴァルブの反応の悪いものや、左右にガタつくものは問題外となり、3本のヴァルブを押す感触が同じで、戻りのスピードも素早くて同じのものを選ぶようにしましょう。
- 試奏する前にヴァルブオイルを確認した上で、戻りに粘りがある場合や、スピードにばらつきがある場合は、速い音符の小刻みなフレーズや、正確なレガートで演奏することが難しくなるので、必ずチェックするようにしましょう。
音色や吹奏感をチェックする
- ピストンを押していない状態の開放音と、各ピストンを押したときの音を比較して、音色や吹奏感が極端に異なっていないかをチェックすることが大切で、この誤差がないほど、どのような調でも均質で安定した音色を奏でることができます。
トリガーをチェックする
- 第1トリガー(左手の中指で操作)と第3トリガー(親指で操作)が、どちらともスムーズに動作することの確認が必要です。
- この操作が容易に行えない場合は、音程の補正が困難になってしまうことや、動きが悪い楽器を選ぶことで唇にダメージを与える要因ともなるので注意が必要です。
仕上げの違いを把握する
- 同じ機種の楽器でも仕上げの違いがあり、ラッカー仕上げの楽器と、銀メッキや金メッキ仕上げの楽器とがあります。可能であれば仕上げの異なる楽器を吹き比べて、自分好みに合った音色で演奏しやすいものを選ぶとよいでしょう。
ホルンを選ぶ際のポイント
ホルンの種類を知る
- ホルンにはB♭管シングルホルン(トロンボーンと同じ長さ)、F管シングルホルン(B♭管よりも長い)、ダブルホルン(B♭管とF管を合わせたもの)とがあります。
- 価格が抑えられて重量も軽くなるのは当然ながら、構造がシンプルなシングルホルンとなりますが、音程の調整が難しく音域も限定されるので、可能であればダブルホルンを選択することを推奨します。
構えたときの姿勢を重視する
- 構えた際に吹き込み管が自身の顔に対して真っ直ぐに位置し、その状態で右手が適切にベルの中に収まる楽器を選ぶようにします。
- この時点で負担がかかるような楽器を選んでしまうと、正しい姿勢や口の形の維持が難しくなるだけでなく、右手のコントロールも失いやすくなるので、音程や音色にも問題が生じてしまう恐れがあります。
マウスピースの挿し込み口をチェックする
- 楽器を試奏する前に、まずはマウスピースを楽器に挿したときのグラつきの確認と、適切な深さまでしっかりと入っているかどうかをチェックする必要があります。
- この初期的な部分が正確に合っていないと、音程や音色に問題が生じて適切な楽器選びの妨げとなってしまいます。
各音の音程をチェックする
- ダブルホルンを選択する際のチェックポイントは、まずはB♭管とF管の倍音の音程に狂いがないかの確認と、極端に演奏しづらい音がないかの確認を行います。
- そして、ヴァルブを押していない状態から全てを押した状態になるまで、半音ずつ下げてチェックを行い、極端に音程がズレてしまう音がある場合や、息が入りにくい音がある場合には控えるようにしましょう。
モデルの違いを把握する
- ホルンには、ベルをスクリュー式のネジで取り外し可能なべルカット(デタッチャブルベル)モデルと、本体とベルが一体化したワンピースモデルとがあります。
- ベルカットモデルはベルを取り外すことで、コンパクトなケースに収納できるようにするためのホルンで、おおよそのメーカーはベルカットタイプに対応し、同モデルで両タイプのものを揃えていて、中にはベルカット限定のモデルもあります。可能であれば両タイプを吹き比べてみるといいでしょう。
テナートロンボーンを選ぶ際のポイント
管の太さを把握する
- テナートロンボーンには、細管(主にジャズで使用)、太管(オーケストラや吹奏楽で使用)、中細管(細管と太管の中間)があります。
- 一般的には自身が演奏するジャンルを考慮して、楽器のタイプを决めるのが理想的ですので、演奏しやすくて自分の好みに合った音色が奏でられるものを選ぶとよいでしょう。
Fアタッチメントの有無
- テナートロンボーンには、Fアタッチメント付きのテナーバストロンボーン(左手親指で操作)と、Fアタッチメントが付いていないシンプルなテナーバストロンボーンとがあります。ジャズで細管を用いる場合は、遠いポジションをあまり使用しないので、Fアタッチメントなしのテナーバストロンボーンが主流です。
- 遠いポジションの音を近くで演奏することが可能で、低音域に広がりがあるFアタッチメント付きのテナーバストロンボーンが一般的には推奨されますが、Fアタッチメントなしのテナートロンボーンも、音が明るくて重量が軽いという特徴がありますので、用途に応じて選択するとよいでしょう。
マウスピースの挿し込みをチェックする
- マウスピースを挿す部分は細管と太管ではサイズが全く異なりますので、マウスピースを選ぶ場合は注意するようにしましょう。
- 同じ細管用や太管用でも、メーカーによって若干挿し込み具合が異なる場合もあるので注意が必要で、楽器と同一メーカーのマウスピースを装着し、どの程度の挿し込み具合が適切かを確認しておくとよいでしょう。
スライドの長さをチェックする
- スライドの長さはメーカーによって違いがありますので、試奏して確認しておきましょう。チェックポイントは、F音を第1ポジションと第6ポジションで鳴らし、さらに半音低いE音を第2ポジションと第7ポジションで鳴らして、第7ポジションまで手が届くかどうかを確認しておきましょう。
楽器の前後のバランスをチェックする
- 楽器の前後のバランスをチェックして、左手に極端な負担がかかっていないか確認しましょう。前に比重がかかっている場合は、後ろにバランサー(おもり)を装着すると矯正されます。
- 前後のバランスをチェックすると同時に、左手親指を支柱にかけて、負担がかからない位置になるかどうかも確認しておきましょう。
バストロンボーンを選ぶ際のポイント
アタッチメントのヴァルブを確認する
- バストロンボーンには、アタッチメントのヴァルブが1つのモデル(低いH音が出ない)と2つのモデルがあります。
- ヴァルブが1つのモデルは、重量が軽くテナーと同じ感覚で演奏することができますが、低いH音が出せないというデメリットがありますので、この音を演奏する機会がある音楽スタイルの場合は、基本的にヴァルブが2つのモデルを選んでおくとよいでしょう。
ヴァルブの設置タイプの違いを把握する
- ヴァルブが2つのモデルのバストロンボーンには、オフセット(第2ヴァルブが第1ヴァルブの迂回管の中に設置)タイプと、インライン(第2ヴァルブが第1ヴァルブと同様に本体の管に設置)タイプとがあり、使用されている比率的にはインラインタイプの方が多いようです。
- オフセットタイプは本体の管がシンプルなので、ヴァルブを使用しない時にスムーズに息が入るという特徴があり、インラインタイプは2つのヴァルブを単独で使用することができるので、オフセットタイプよりも効率良いスライドポジションの選択ができるという特徴があります。
構えた際の前後のバランスをチェックする
- バストロンボーンは楽器の重量が重い上に、ヴァルブを操作する親指と中指以外の左手だけで支えなければいけない楽器ですので、構えた際の前後のバランスにも気を配りながら、楽器全体の重量を支える必要があります。
- 構えている態勢に負担がかかった状態で楽器を長時間演奏していると、腕や肩を痛めてしまったり、右手に頼って支えてしまうことで、スライドが歪んでしまうこともあるので注意が必要です。
バストロンボーン専用のマウスピースを用意する
- バストロンボーンのマウスピースに、太管テナートロンボーン用のマウスピースを装着することも可能ですが、これでは正しいバランスの音程や吹奏感を感じることが難しくなるので、試奏する際は出来る限り大きくて深い、バストロンボーン専用に製作されたマウスピースを装着して楽器を選ぶことを推奨します。
ユーフォニアムを選ぶ際のポイント
コンペセイティングシステムの有無をチェックする
- ユーフォニアムには、コンペセイティングシステムを搭載したモデルと、搭載していないモデルとがあります。コンペセイティングシステム搭載のモデルは、B♭管とF管を合わせたダブルホルンに相当します。
- このシステムを搭載したモデルは、B♭管より下の音域の音程が安定するという特徴があります。ただし、楽器の重量が重くなり、演奏した際の抵抗感が若干強まる傾向がありますので、自身の音楽スタイルで、B♭管よりも下の音域を頻繁に使用する機会があるかどうかなどの、用途を踏まえて選択するといいでしよう。
- また、一般的な英国式のユーフォニアムは、コンペセイティングシステムの装備を標準として開発されており、上級者の方の多くはこのモデルを使用していることがあるので、上級レベルを目指されている方は、コンペセイティングシステムを搭載したモデルを選択することを推奨します。
ヴァルブをチェックする
- コンペセイティングシステム搭載モデルは、B♭管とF管を切り替える第4ヴァルブを備えていますが、搭載されていないモデルは、ヴァルブが3本のものと4本のものがあります。
- 3本ヴァルヴのユーフォニアムだと音程の補正が難しいことがあるので、出来れば4本ヴァルブのユーフォニアムを推奨します。また、手が小さく小指の第4ヴァルブ操作が難しい方は、左手で操作するタイプの楽器を選択する手もあります。
マウスピースの挿し込み部分をチェックする
- ユーフォニアムは、トロンボーンの太管や細管ほどの、管のサイズやベルの大きさの違いはありませんが、マウスピースを挿す部分の太さの違いは、トロンボーンと同様に太管と細管とがあります。
- ヨーロッパ製のユーフォニアムの中には、挿し込み口が中太管(太管と細管の中間の太さ)になっている楽器もあるのでしっかりとチェックし、このような場合は専用のマウスピースかアダプターで対応します。
- 演奏がしやすくて、自身の求める音を奏でられる楽器を選ぶことが大前提ですので、太管の方が音が太いというような先入観だけで選ぶのは控えるようにしましょう。
チューバを選ぶ際のポイント
調性の違いによる種類があることを把握する
- チューバには、B♭管(最も長い)、C管(B♭管よりも全音分短い)、さらに短いE♭管やF管などの異なった調性のチューバの種類があります。
- 基本的には音程の癖が少ないB♭管で始めるのが一般的ですが、演奏者や国によっては違う調性のものを使うことがあり、上級者の方がC管を使うこともあれば、ヨーロッパでは小型のF管から始める習慣もあります。
- 最初から自身の求める音に沿った調性の楽器を購入するのも、楽器が高価なこともあるので一つの選択肢でもあります。どの調性の楽器の場合でも、くれぐれも音程の癖をチェックすることは忘れないようにしましょう。
用途に合わせてサイズを選択する
- チューバは同じ長さのタイプでも、色々なサイズのモデルがあるので、自身に最も適しているものを選ぶ必要があります。くれぐれも先入観に捉われず、様々なサイズのチューバを試奏してみることを推奨します。
- あくまでも傾向としてですが、小型のチューバは金管五重奏など小さな編成で演奏する場合や、明るくはっきりとした音を求めるタイプの方に適し、大型のチューバは大編成の合奏で演奏する場合や、どっしりとして豊かな響きを求めるタイプの方に向いているでしょう。
ロータリー式とピストン式を把握する
- チューバにはロータリー式タイプとピストン式タイプがあり、どちらを選択するかは自身の音色の好みなどを考慮して、トータル的な相性で選ぶとよいでしょう。
- ヴァルブの種類に関してのチェックは、無駄がなく速い動きに対してのレスポンスや、滑らかなフレーズを演奏した際の音色の動き方が、自身の求めるものと合致しているかなどを確認するといいでしよう。
マウスピースの挿し込み具合をチェックする
- 楽器によってはマウスピースの挿し込み具合に違いがある場合があり、マウスピースが適切に挿入されていないと、音程のバランスが崩れることもありますので、試奏する前に確認するようにしましょう。
- 特にヨーロッパ製のチューバやマウスピースを試すときは要注意で、出来れば純正のマウスピース、またはそのヨーロッパ製に準じたマウスピースの適正な挿し込み具合を事前に知っておくと安心です。
構えたときのマウスピースの位置をチェックする
- チューバは重量が重い楽器になるので、座り姿勢で演奏するのが基本となり、楽器は膝の上か椅子の上に乗せて演奏することになります。
- その構えた姿勢の時に、マウスピースが適正なポジションに位置していない楽器の場合、姿勢に乱れが起きたり、適切な口のコントロールができない状態になってしまうので、背筋を真っ直ぐに伸ばしリラックスして構えた状態の時に、マウスピースが演奏しやすいポジションに位置しているかどうかをチェックしましょう。
- どうしても適切なポジションに位置しない場合は、チューバスタンドを使用する方法もあります。