バストロンボーンのメカニズム
バストロンボーン本体
バストロンボーンとテナートロンボーン長さは違うの?
管楽器の場合、基本的にバスと付く楽器は通常の楽器よりも長いのが一般的ですが、バストロンボーンはテナートロンボーンと同じ長さのB♭管になります。
元々バストロンボーンは、テナーよりも長いF管やE♭管でしたが、テナーよりもスライドが長いことで、遠いポジションに手が届かないという弱点があったため、スライドの支柱にハンドルと呼ばれる金属製の棒を取り付けて操作していました。
そこでテナートロンボーンの管を太くして、バストロンボーンの音域をカバーする楽器として製作されたのが今日のバストロンボーンです。本来のF管の低音域は、Fアタッチメントの装着で対応しています。
バストロンボーンにヴァルブが二つ付いているのはなぜ?
テナーバストロンボーンとバストロンボーンの最大の違いは管の太さですが、それ以外にもバストロンボーンのヴァルブの数が、テナーよりも一つ多いことも重要なポイントです。
F管のバストロンボーンのスライドは長いので、テナーと同じB♭管のスライドでは遠いポジションが不足してしまいますので、それを補うためにもう一つ迂回管が必要になるためヴァルブが一つ多くなっています。
ヴァルブを押してF管の長さにしたとき、B♭管のスライドで最大に伸ばしても、辛うじて6ポジションの音までしか出ませんので、7ポジションの音を出すためには、最低半音下げる必要があります。
当初はその半音分だけ下がるE管が付けられていましたが、今日ではさらに長いE♭管やD管が付けられるようになっています。
シングルロータリーとダブルロータリーどちらを選べばいいの?
二つのヴァルブが装備されているバストロンボーンの中には、テナーバスと同じように、ヴァルブが一つしか付いていないシングルロータリーのバストロンボーンもあります。
このシングルロータリーのバストロンボーンも、テナーよりも太い管を備えていて、音色もバストロンボーンそのものに他なりません。
ヴァルブが一つでは低いH(シ)音が出せないことが生じてきますが、オーケストラの楽曲では頻繁に出てくる音ではないため、シンプルで軽い方が良いということで、ヴァルブが一つしか付いていないバストロンボーンを選ぶ方もいます。
また、どうしてもH(シ)音が必要な場合は、メーカーや機種によってF管の抜き差し管を最大限伸ばすことで対応できる楽器もあり、中には第2ヴァルブが取り外し式になっていて、必要な場合だけダブルにするタイプのバストロンボーンもあります。
オフセットとインラインどちらを選べばいいの?
二つのヴァルブが装備されているバストロンボーンには、ヴァルブの配置の違いによってオフセット(第2ヴァルブがF管の迂回管の途中に付いている)と、インライン(第2ヴァルブが第1ヴァルブと同じ主管に付いている)の異なるタイプがあります。
オフセットタイプは、第1バルブを押しているときに第2バルブを押すと、両方の管の長さを合わせたE♭管になるという仕組みです。
インラインタイプのように第2バルブだけを単独で使用することはできませんが、第2バルブが主管を通っていないので、シングルロータリーの楽器のような吹奏感を得ることができ、インラインタイプに比べると明るく軽やかな音が特徴的です。
インラインタイプは、第1バルブのF管、第2バルブのG♭管以外に、2つのバルブを両方押すとD管にもなるので、低音域で様々なポジションの可能性が広がるという利点があります。
仲間の楽器~コントラバストロンボーン~
バストロンボーンよりもさらに低い音域を担当するのが、コントラバストロンボーンという楽器です。
今日用いられているコントラバストロンボーンの多くはF管ですが、元々のコントラバストロンボーンは、テナーの倍の長さを備えるB♭管でした。
本来がB♭管であるコントラバストロンボーンは、テナーの倍の長さがあるのでスライドも必然的に倍の長さになり、人のリーチでは届くような距離ではなくなってしまいます。
これを解決するために、昔のコントラバストロンボーンで行われた工夫は、テナーと同じ長さのスライドを二組取り付けて、それを同時に動かすというもので、テナーと同じ距離を動かすだけで倍の長さ分動くので、結果としてテナーと全く同じポジションで演奏することが可能になったのです。
画期的な素晴らしいアイデアでしたが、高いスライドの精度が要求されることから、現代では殆ど使われなくなっています。