音楽はなぜ楽しいのか

音楽は脳の活動を高めると同時に、ある部分では低下させることで感動をもたらしています。
「愛情」に代表される快刺激で活性化する脳の領域は、音楽でも活性化するということです。

音楽の心地よさ

一般に音楽は「心地よさ」つまり快情動を引き起こしますが、いずれの音楽でも大脳辺縁系や新皮質での活動が見られます。

しかし、協和と不協和では特定の脳内領域の活動パターンが異なり、不協和が増すにつれ眼窩前頭皮質、梁下帯状回、前頭極皮質の活動が活発化します。これらの領域は皮質聴覚野とは別の場所の大脳辺縁系にあります。

このことは、音楽の知覚・認知に関わる領域と、音楽情動反応とでは異なった神経経路が使われていることを意味します。

また、恐怖反応で活動が見られる左脳扁桃体の活動は見られず、右脳の脳組織が活動の中心となっています。このことから、音楽における負の情動(不協和音等)は、恐怖反応に代表されるような負の情動とは異なると考えられます。

音楽の抽象的な知覚・認知は新皮質レベルの活動で、より基本的な知覚は大脳辺縁系を中心とした器官で処理されています。

音楽に反応する回路は、恐れや喜びなどに反応する回路と同様という事実、音楽も他の情動刺激も大脳辺縁系の反応をもたらし、大脳辺縁系は人間に限らず動物にとって生存や生殖に関わる重要な器官ですが、それが音楽と直結しているということです。

感動をもたらす音楽を聴いた際、左脳の腹側線条体、中脳内側、傍辺縁系の血流を増加させる働きがあり、右脳の扁桃体、左脳の海馬・扁桃体、内側前頭皮質では血流の低下がみられます。

また、両半球の島、右眼窩前頭皮質、視床と腹側帯状と前頭葉内の補足運動野と小脳でも活動が増します。こうした器官は本来、食事(摂食)や性行動、薬物依存といった人間の快行動(多幸感や報酬)に応答して活性化する領域で、いずれもドーパミンオピオイドという神経伝達物質で働く神経システムです。

側坐核にはオピオイド受容体がたくさんあり、エンケファリンによる調整も受けています。側坐核から延びているニューロンは、オピオイドを伝達物質とする神経で報酬行動に関与しています。

受容体

側坐核と腹側被蓋でドーパミンの活動が高まるのは、摂食や性行動による多幸感など、生得的報酬反応に共通するメカニズムです。扁桃体は側坐核と腹側被蓋にグルタミン作動性遠心路を送っており、オピオイド性反応の中心構造です。

薬物による多幸感では左扁桃体の活動が低下し、音楽聴取による興奮では右扁桃体と海馬で血流が低下しますが、これらの組織は恐怖や不安で血流量が増加し、多幸感で減少するメカニズムです。

音は扁桃体で処理され、快刺激の場合は扁桃体の活動が低下しますが、音楽は快刺激なので扁桃体の活動が弱まるのは当然のことです。

このように音楽は脳の活動を高めると同時に、ある部分では低下させることで感動をもたらしています。その意味でも音楽は脳全体を使っているのです。

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