はじめに:黄金律を自分だけのサウンドに
これまでの記事で、カノン進行の基本から応用までを探ってきました。第4回では簡単なアレンジ術に触れましたが、今回はさらにその先へ。ありふれたカノン進行を、あなただけのオリジナリティ溢れる、プロフェッショナルな響きに変えるための「上級アレンジ術」を伝授します。
「テンションノート」でお洒落に、「セカンダリードミナント」でドラマティックに、「借用和音」で意外性を。これらのテクニックを駆使すれば、カノン進行は無限の表情を見せ始めます。DTMでの作曲や、バンドアレンジの質を格段に向上させたい方は必見です。
テクニック1:響きを豊かにする「テンションノート」の魔法
いつもの C や Am に、1つ音を加えるだけで、サウンドは驚くほど洗練されます。それがテンションノートです。
- 基本: 3和音(ドミソなど)に、さらに音を重ねて4和音(セブンスコード)以上にすること。
- 効果: コードに複雑さと色彩を与え、都会的で「おしゃれ」な響きを生み出します。
【カノン進行への適用例】
元の進行: C → G → Am → Em → F → C → F → G
↓
アレンジ後: **CM7** → **G7** → **Am7** → **Em7** → **FM7** → **CM7** → **FM7** → **G7**
- CM7 (ドミソシ): Cに「シ」の音を追加。優しく、浮遊感のある響き。
- G7 (ソシレファ): Gに「ファ」の音を追加。次にCへ進みたくなる緊張感がさらに増す。
- Am7 (ラドミソ): Amに「ソ」の音を追加。切なさの中に、少し大人びた雰囲気が加わる。
さらに、Cadd9 (ドミソレ) や Am9 (ラドミソシ) といった9thの音を加えると、よりモダンで浮遊感のあるサウンドになります。
テクニック2:滑らかな流れを生む「分数コード」と「ウォーキングベース」
**分数コード(オンコード)**とは、コードの最低音(ベース音)を指定するテクニックです。これを使うと、ベースラインが滑らかにつながり、曲全体に安定感とグルーヴが生まれます。
【ベースラインを滑らかにする適用例】
元の進行 (ベース音): ド → ソ → ラ → ミ → ファ → ド → ファ → ソ (音の跳躍が大きい)
↓
アレンジ後: C → **G/B** → Am → **Am/G** → F → **C/E** → Dm7 → G
アレンジ後のベース音: ド → **シ** → ラ → **ソ** → ファ → **ミ** → レ → ソ (隣の音へ順に下降)
このようにベースが順に動くことで、聴き心地が格段に向上します。ジャズなどで聴かれる、ベースがメロディックに動き回る「ウォーキングベース」も、この考え方の延長線上にあります。
テクニック3:意外性と感動を生む「借用和音(モーダルインターチェンジ)」
曲に深みと意外性を加えたいときの切り札が「借用和音」です。これは、同じ主音を持つ短調(CメジャーキーならCマイナーキー)からコードを「借りてくる」テクニックです。
Cマイナーキーのダイアトニックコード: Cm, Ddim, Eb, **Fm**, **Gm**, **Ab**, **Bb**
【カノン進行への適用例】
- FをFmに変える
C → G → Am → Em → **Fm** → C → F → GF(ファラド)がFm(ファ・ラ♭・ド)になることで、一瞬影が差し、非常に切なくドラマティックな響きになります。多くのJ-POPの名曲で使われるテクニックです。 - EmをEbに変える
C → G → Am → **Eb** → F → C → F → GAmからEbへの進行は意表を突く展開で、曲のフックになります。トニック(Am)からサブドミナント(F)への橋渡しとして機能します。
まとめ:カノン進行は再構築するキャンバス
今回は、ありふれたカノン進行をプロ級のサウンドに昇華させるための3つの上級テクニックをご紹介しました。
- テンションノートで、コードにお洒落な色彩を加える。
- 分数コードで、滑らかなベースラインを構築する。
- 借用和音で、感動と意外性を演出する。
カノン進行は完成されたものではなく、あくまで作曲の出発点です。これらのテクニックを参考に、自由にコードを組み替え、響きを試し(リハモナイズ)、あなただけの黄金律を創り出してください。音楽の探求は、ここからさらに面白くなります。














