はじめに:黄金律を「使う側」になろう
これまでカノン進行の魅力や仕組み、そして数々の名曲を見てきました。終盤となる第4回では、いよいよあなたがカノン進行を「使う側」になるための方法を解説します。
「作曲なんて難しそう…」と思うかもしれません。しかし、カノン進行という強力な設計図があれば、誰でも簡単に曲作りの第一歩を踏み出すことができます。この記事では、ピアノやギターでの簡単な弾き方から、オリジナリティーを出すためのアレンジ術、さらにはカノン進行からの「脱却」のヒントまで、実践的な使い方をご紹介します。
STEP1:まずは弾いてみよう!カノン進行の基本
作曲の第一歩は、まずコードを鳴らしてみること。ここでは、最も基本的なハ長調(Cメジャー)のカノン進行を弾いてみましょう。
【ピアノでの弾き方】
ピアノは、左手でコードの根音(ルート音)を、右手で和音(コード)を弾くと、伴奏らしく聴こえます。
- C: 左手「ド」、右手「ドミソ」
- G: 左手「ソ」、右手「シレソ」
- Am: 左手「ラ」、右手「ドミラ」
- Em: 左手「ミ」、右手「ソシミ」
- F: 左手「ファ」、右手「ドファラ」
最初はゆっくりで構いません。C → G → Am → Em → F → C → F → G の順番で、滑らかにコードチェンジができるように練習しましょう。この伴奏をループで弾いているだけでも、不思議と心地よい音楽が生まれるはずです。
【ギターでの弾き方】
ギターは、基本的なオープンコードで弾くことができます。
- C, G, Am, Em, F は、ギター初心者が最初に覚えるコード(Fは少し難しいかもしれません)ばかりです。
- ストロークは、まずは簡単なダウンストローク(ジャーン、ジャーン)から始めてみましょう。
このコード進行を弾きながら、鼻歌でメロディーを乗せてみるだけで、もう立派な作曲の始まりです。
STEP2:メロディーを作ってみよう!作曲のヒント
カノン進行という土台があれば、メロディー作りはぐっと楽になります。
メロディー作りのヒント
- コードの構成音を使う: 最も簡単な方法は、その時に鳴っているコードの構成音をメロディーの中心に置くことです。例えば、Cコードが鳴っているときは「ド、ミ、ソ」の音を、Gコードのときは「ソ、シ、レ」の音を中心にメロディーを組み立てると、響きが濁らず安定します。
- 同じリズムパターンを繰り返す: Aメロでは「タンタンタタ」、Bメロでは「タータータタ」のように、短いリズムのパターンを決めて、それに合わせて音の高さを変えていくと、メロディーに統一感が生まれます。
- 歌詞から作る: 伝えたいメッセージや物語を先に考え、その言葉の抑揚やリズムをメロディーにしてみるのも有効な方法です。カノン進行の持つストーリー展開(安定→緊張→展開)に合わせて歌詞を考えると、より感動的な曲になります。
C→G→Am→Em の切ない部分には別れの言葉を、F→C→F→G の盛り上がる部分には希望に満ちた言葉を乗せてみてはいかがでしょうか。
STEP3:脱・カノン進行!オリジナリティーを出すアレンジ術
カノン進行は強力ですが、それだけだと「またこの感じか」と思われてしまうことも。ここからは、カノン進行をベースに、一味違う響きを生み出すためのアレンジ術をご紹介します。
【アレンジ術1:コードを少し変えてみる(代理コード)】
音楽理論の回で学んだ「コード機能」を思い出してください。同じ機能を持つコード同士は、入れ替えても響きが破綻しにくい性質があります。これを代理コードと呼びます。
- Em (iii) → C (I) に変える:
C→G→Am→**C**→F→C→F→GEmの切ない響きがなくなり、より明るくストレートな印象になります。 - F (IV) → Dm (ii) に変える:
C→G→Am→Em→**Dm**→C→**Dm**→GFよりも少しお洒落で、より切ない響きを加えることができます。
【アレンジ術2:J-POPの王道進行に進化させる】
日本のポップスでカノン進行以上によく使われるのが、通称「王道進行」または「小室進行」と呼ばれるものです。
- 王道進行:
F→G→Em→Amカノン進行の後半部分Em→F→C→F→Gを並び替えたような進行。サビで使うと、非常にキャッチーで感動的な雰囲気になります。 - 小室進行:
Am→F→G→C90年代に小室哲哉氏が多用した進行。切なさから始まって、最後は明るく解決する流れが特徴です。
【アレンジ術3:スパイスを加える(非ダイアトニックコード)】
ダイアトニックコード以外の音(スパイス)を加えると、曲が一気にプロっぽくなります。
- セカンダリードミナント:
C→**E7**→Am→...のように、次のコードに強く進みたがる性質を持つコード(ドミナント)を挿入するテクニック。ここではAmに向かうE7を使っており、よりドラマティックな響きになります。 - 分数コード(オンコード):
C/G(シー・オン・ジー)のように、コードの最も低い音(ベース音)をルート音以外にするテクニック。ベースラインが滑らかになり、お洒落な響きになります。
まとめ:カノン進行は創造性のキャンバス
今回は、カノン進行を使った作曲とアレンジの入門編をお届けしました。
- まずは弾いてみることから始めよう。
- メロディーはコードトーンやリズムパターンを意識すると作りやすい。
- 代理コードや王道進行、スパイスを加えることで、オリジナリティーが出せる。
カノン進行は、単なる「決まりきったコード進行」ではありません。あなたの創造性を広げるための、真っ白で広大なキャンバスです。
このシリーズを通して、カノン進行の奥深さと楽しさが少しでも伝われば幸いです。さあ、あなたも今日から、カノン進行という魔法の杖を手に、自分だけの音楽を奏でてみてください。















