装飾音と装飾記号 【楽典】ピアノ/ギター入門 初心者向け音楽 音符・楽譜の読み方
ある音に他の音を補い華やかさを与えて、旋律を飾るために付け加えた音を装飾音といいます。
時代様式や作曲家によって様々であり、定型化された装飾音は装飾記号を用いて記します。
装飾音 [英:grace / decoration mark]
装飾音には前打音、モルデントなど1種類からなるものと、前打音とトリル、トリルと後打音など2種類からなるものと、さらにターンとトリルとモルデントなどの3種類を組み合わせたものとがあります。
旋律に装飾する歴史は古くグレゴリオ聖歌にも見られ、18世紀頃には装飾することが音楽の基本的な条件の一つになり、この時代の装飾には演奏家が即興的に自由に装飾する自由装飾(イタリア式装飾)と、作曲家が楽譜に小音符や記号で記す定型的装飾(フランス式装飾)がありました。
しかし、定型的装飾もこの時代には共通の定型がありませんでしたので、各国の時代や作曲家により名称や奏法などは様々で現代に至っても演奏上、最も原則を定めにくい分野となっています。
そのため出版されている楽譜で、バロック時代の楽譜に付けられた装飾記号の大半は、作曲者の関係者や後世の演奏家、校訂者が記入したものに他ならず、時代や出版社によって違いやバラつきがあります。
装飾音を示す記号の多くは、その音の動きを記号化したものです。装飾音の記し方では例外なく基になる音符より小さく記し、そしてどのような高い音でも符尾(棒)は上向きに記します。
基になる音より前に付くものが一般的で、装飾音の種類には、小音符に斜線を持たず原則的にその音符の長さを演奏する長前打音と、斜線が入った8分音符の小音符でなるべく短く演奏する短前打音があります。
長前打音は演奏者の解釈により扱い方は様々で、短前打音についても短くの度合いは曲想やもとの速度によって違ってきます。
他に複数の音からなる複前打音があり、斜線は入れずに小さな16分音符で記され短く奏します。
装飾音の奏法例
装飾記号
定型化された装飾音は「装飾記号」を用いて記され、装飾記号はどれも演奏の動作を助けます。装飾記号は演奏すべき音を正確に記さないことからも、略記法にも近いものがあります。
トリルは、記号の付いた音とその2度上の音を素早く交互に繰り返して演奏します。繰り返す回数や音形は曲の速さによって変化します。
モルデントは、その音符とそのすぐ下の音とを1回(複モルデントは2回)反復させて演奏します。
プラルトリラー(プララー)は、その音符とそのすぐ上の音とを1回、
は2回反復させて演奏します。
ターン(転回ターン)
は、その音を中心に上下の音を回転するように演奏します。
トレモロは、1つあるいは複数の音符や和音を素早く反復させて演奏します。
アルペジオは、和音を同時にではなく下または上から順番に弾いて演奏します。
記号に指示がない場合は下から上に演奏することが多いですが、記号の先に矢印を付けてアルペジオを行う方向を指示している場合もあります。
装飾記号の奏法例
トリル |
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外国語表記 |
〔伊:trillo〕 〔英:trill〕 |
解説 |
「その音符と2度上の音を素早く反復させて演奏する」 2度上の音に臨時記号を付けたい場合は、トリル記号の上に臨時記号を付けます。ギターではハンマリング・オンとプリング・オフを、素早く繰り返して行います。
トリルの演奏法
◇楽譜上の表記 ◇実際の奏法例
◆終わりのターンを示す記譜
◆上からのトリルを示す記譜
◆トリル前のターンを示す記譜①
◆トリル前のターンを示す記譜② |
モルデント / 複モルデント |
|
外国語表記 |
〔独:Mordent〕 〔英:mordent〕 |
解説 |
「その音符とそのすぐ下の音とを、1回(複モルデントは2回)反復させて演奏する」
モルデントの演奏法
◇基本形①
◇基本形②
◇複モルデント |
プラルトリラー(プララー) |
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外国語表記 |
〔独:Prarlltriller〕 |
解説 |
「その音符とそのすぐ上の音とを1回(
プラルトリラーの演奏法
◇基本形①
◇基本形②
◇2回反復する形 |
ターン |
外国語表記 |
〔英:turn〕 |
解説 |
「記号の付いた音を中心に上下の音を回転するように演奏する」
ターンの演奏法
|
転回ターン(逆ターン) |
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外国語表記 |
〔英:reverse turn〕 |
解説 |
「記号の付いた音を中心に上下の音を回転するように演奏する」
転回ターンの演奏法
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トレモロ |
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外国語表記 |
〔伊:tremolo〕 |
解説 |
「1つあるいは複数の音符や和音を素早く反復させて演奏する」 フルートやトランペットのフラッター・タンキングを表記する場合もあります。
◇8分音符のトレモロ
◇16分音符のトレモロ
◇32分音符のトレモロ
トレモロの演奏法
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏 (ピアノの場合) |
アルペジオ(アルペッジョ) |
Arp. |
外国語表記 |
〔伊:arpeggio〕 |
解説 |
「和音を同時にではなく下または上から順番に弾いて演奏する」 記号に指示がない場合は、下から上に演奏することが多いですが、記号の先に矢印を付けて、その方向を指示している場合もあります。
アルペジオの演奏法
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏 |
長前打音 |
外国語表記 |
〔英:long appoggiatura〕 |
解説 |
「小音符の長さとその音符とで分割して演奏する」 音価のない小音符で表記された装飾音符の一種で、これが付けられている音符の長さを、小音符の長さとその音符とで分割して演奏します。
長前打音の演奏法
◇楽譜上の表記(基本形) ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記(基本形) ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記(付点音符) ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記(付点音符) ◇実際の演奏 |
短前打音 |
外国語表記 |
〔英:short appaggiatura〕 |
解説 |
「音符の符尾に斜線を付けて表し装飾的に演奏する」 音価のない小音符で表記された装飾音符の一種。音符の符尾に斜線を付けて表し装飾的に演奏する。もとの音符の拍の位置で演奏する場合と、その拍より少し前に演奏する場合があります。
短前打音の演奏法
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏 |
複前打音 |
外国語表記 |
〔英:double appoggiatura〕 |
解説 |
「複数の音からなり斜線を付けずに表し装飾的に演奏する」 短前打音と同じような装飾音符を指しますが、こちらは2音以上になります。もとの音符の拍の位置で演奏する場合と、その拍より少し前に演奏する場合があります。
複前打音の演奏法
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏
◇楽譜上の表記 ◇実際の演奏 |