テノーレ・レッジェーロ
テノーレ・レッジェーロについて解説していきます。
テノーレ・レッジェーロ(Tenore Leggero)は、イタリア語で「軽いテノール」という意味です。声楽の分野において、テノール・レッジェーロは軽やかで柔らかい音色を持ち、通常は比較的高い音域で歌うことが特徴です。
- テノールは、男性の声の中で最も高い音域を持つ声の種類です。一般的には、テノール、リリコ、スピント、ドラマティコ、ヘルデンテノールなどに分かれます。さらに高い声はカウンターテナーと呼ばれます。役柄によりだいたい決まっています。
- テノーレ・レッジェーロは、その名前からもわかるように、非常に軽やかで明るい声質を持つテノールです。この声質は、特にオペラブッファと呼ばれる軽い喜劇的なオペラでよく登場します。ロッシーニ作曲の「セビリアの理髪師」に出てくるアルマヴィーア伯爵のような役が典型でしょう。このような役には、軽く澄んだレッジェーロがぴったりです。レッジェーロはコロコロと転がすように歌う、コロラトゥーラの技巧も求められることが多く、技術的にもなかなか大変です。最近の歌手でいうと、ペルーの歌手ファン・ディエゴ・フローレスなどがそうですね。超高音を難なく出して軽快なコロラトゥーラを歌う人です。
ドラマティコよりさらに重厚で、テノールの種類の中で最もドラマティックな声と強靭な喉が求められるのがドラマティコです。日本人のような華奢な体型ではこのドラマティコは難しいテノールです。
高音でありながら、太く力強い声はドラマティックなオペラにぴったりで、感動を呼びますが、それだけ歌手の負担も大きいといわれ、この領域に行くのは大変なことだと思います。
その分熱烈な支持も高いのもこのドラマティコテノールなんですね。役柄の代表格はヴェルディの「オテロ」でしょう。
オテロはヴェルディが74歳のときに作った渾身の作品で、それまで以上に音楽と演出とストーリーが一体となっており、最初から最後まで緊張感に満ちたドラマティックな作品になっています。
そのため従来のイタリアオペラよりも重厚な力強いテノールの声質が求められている役柄です。
日本の歌手でいうと、カウンターテナーのチョ・ミンギュさんが有名です。彼は韓国のテレビ番組「ファントム・シンガー」で注目され、Forestellaのメンバーとして活躍しています。
テノーレ・レッジェーロの特徴と役割
1. 声域: テノーレ・レッジェーロの声域は一般的に高めで、特に高音域に優れています。しばしばテノーレ・リリコ・レッジェーロ(Tenore Lirico-Leggero)としても知られており、より幅広い音域を持つことがあります。
2. 軽やかな音色: テノーレ・レッジェーロの声質は、軽やかで明るく、しばしば透明感があります。この声質は、軽快で華やかな音楽のラインや装飾音を美しく歌うのに適しています。
3. 柔軟性と技巧: テノーレ・レッジェーロは、声の柔軟性と技巧を持っており、高音や装飾音を滑らかに歌うことができます。彼らはしばしば技術的に要求の高いアリアや難しい音楽のパッセージを歌います。
4. 感情豊かな表現: テノーレ・レッジェーロは、感情豊かな表現力を持っており、しばしばロマンティックなオペラや情熱的な役割を演じます。彼らの歌唱は感動的であり、聴衆の心に深い感情を呼び起こすことがあります。
5. レパートリー: テノーレ・レッジェーロは、通常はロマンティックなオペラやベルカント(美しい歌唱)スタイルの作品で活躍します。彼らのレパートリーには、ベルディやドニゼッティ、ベッリーニなどの作曲家によるオペラの主役や重要な役割が含まれます。
テノーレ・レッジェーロは、その明るい音色、柔軟性、技巧、そして感情豊かな表現力によって、オペラの舞台で重要な役割を果たす声楽家の一つです。彼らの歌唱は、オペラの世界で特に愛され、賞賛されています。